首相の訪問に背を向ける医療従事者たち
5月16日、ベルギーの首都ブリュッセルにあるサン・ピエール病院を訪れたソフィー・ウィルメス首相。新型コロナウイルス患者のために最前線で働く医療従事者たちを激励するための訪問だったというが、現場で働く医療従事者たちには様々な思いがあったようだ。
首相を乗せた車が病院に到着すると、花道を作って並んでいた何百人もの医療従事者たちはみな背を向けてしまったのである。
この様子は「首相が受けた冷たい歓迎」と地元メディアに報じられ、ベルギーの医療現場で働くスタッフたちの抗議であったことが明らかとなった。
医療現場の不満の声を首相に
抗議には医師や看護師をはじめ、清掃や物流業務などを担当するスタッフたちも参加していたが、自分の身を削りながら未知のウイルスに立ち向かい、強制的に働かされる医療従事者の給与や超過勤務について不満の声を示したものだったという。
人手不足の医療現場では、その激務から燃え尽き症候群に陥る人も多いようで、医療従事者たちをもっと評価するべきだとの声が上がっている。
昨年、ベルギー初の女性首相となったウィルメス首相だが、就任前は4年間財務大臣を務めており、その在職期間に医療費の大幅な予算削減があったという。そんな首相に対し、医療現場から抗議の声が起こったのは当然だったのかもしれない。
人口約1,100万人のベルギーでは、これまでに55,000人以上が感染しておりウイルス関連での死者は9,000人以上報告されている。他国と比較しても特に高い死亡率を巡っては、これまでにも政府の対応が批判されていた。