下手くそな素人に頼んだせいで作品が台無しに
2012年、スペインに住む82歳の女性がキリスト画の修復に失敗し、そのひどさから世界的に有名になったのは皆さんもご存知だろう。
なんとこの悲劇がまたスペインで起こってしまい、専門家が怒りを爆発させている。
Spain has been hit by yet another bungling restorer, who turned this Virgin Mary painting into an unrecognizable blob: https://t.co/G2uKfLNf8o pic.twitter.com/0ASSjL1ybZ
— Artnet (@artnet) June 23, 2020
6月19日に報じたスペインのメディア「Europa press」のニュースによると、バレンシアの美術コレクターが、約1200ユーロ(14万4000円)で家具の修理人に絵画の修復を依頼したという。
預けたのは、17世紀の作家バルトロメ・エステバン・ムリーリョの作品「無原罪の御宿り」の複製画。
ところが修理人から納品された作品は、どうみても原作とは程遠い出来で、コレクターは強い衝撃を受けた。(埋め込み画像右上)
そのため別の業者に修復を依頼したが、またしても失敗。(埋め込み画像右下)
最終的には、貴重な絵画作品が原型をとどめない状態になってしまった。しかし、こうした悲劇は我々が思っている以上に頻繁に起こってしまうという。
スペイン絵画保存専門家協会(ACRE)のバレンシア支部副会長、マリア・ボルハ氏はこの事態を憂慮しており、このように語る。
「メディアやSNSを通じて報じられる事例のみ大きく語られがちですが、こうした問題は数多く起こっています。
こうした作品は、専門外の人々の手によって、取り返しのつかない失敗を起こされてしまうのです」
こうした絵画修復は法律で規制されていないため、素人による修復を罰することはできない。そのため、修復を行う際にも文化省への事前の申請は必要ない。
また、スペインで定められている文化遺産法自体は、保護修復の訓練を受けた専門家による作業を義務付けたり、推奨するものではないとしている。時折、ロマネスク様式などの非常に価値ある作品の修復の時のみ、警告されるだけだという。
もっとも大きな問題は、文化省による保存修復作業の審査が、網羅的に行われていないということ。絵画修復には、厳格な職業倫理を備えた専門家が必要不可欠だという。
これには、ガリシア文化遺産保護修復学校のフェルナンド・カレラ教授もコメントを出しており、「私は今回の家具職人のような男が、修復師と呼ばれるべきではないと思っています。率直にいうと彼らはヘタクソで、作品を台無しにしている。」と怒りをにじませている。
今回のような素人による修復をされてしまうと、専門家でも元に戻せなくなることもある。そのため、スペインの文化遺産を守るためにも、厳しい規制が必要だと叫ばれている。
参照元:Europa press、Twitter