テロリストに立ち向かった勇気から恩赦を受ける
2019年11月、イギリス・ロンドンにあるロンドン橋にて、犯罪者更生プログラムを受けていたテロリストが刃物を持って暴れ、死者2名をだす事件が発生した。
その際、現場に居合わせた6名の男性が果敢にも立ち向かい、イッカクのツノを使って犯人を取り押さえたことで一躍話題に。また、仮釈放中の受刑者1名が取り押さえに混ざっていたことも注目された。
だがその後、勇敢な人々の中にもう一名受刑者が混ざっていたことが捜査によって明らかになった。
その男性の名前はスティーブ・ギャラン氏。殺人で有罪判決を受け服役していたが、事件の日は仮釈放されており、犯人と同じ犯罪者更生プログラムに出席していた。
当時彼は会議場にいたというが、下の階から騒音が聞こえたという。同席していた弁護士からは「部屋にいるように」という指示があったというが、彼はそれを無視し下の階へ。すると、怪我をしている人を見かけた後、刃物を持って歩いている男を目撃した。
ギャラン氏は「明らかに危険だ」と認識し、躊躇なく男の方へ。ロンドン橋まで追いかけたあと、イッカクの角で応戦したが折れてしまい、椅子で応戦した。その後、爆弾を見せられながらも警察の到着を待ったという。
この一連の勇気ある行動から、ロンドン市長サディク・カーン氏は犯人に立ち向かった受刑者らの減刑を発表していた。
そんな中迎えた今年10月、なんとエリザベス女王が、ギャラン氏の恩赦を発表。これにより刑期は10ヶ月短縮され、来年6月に仮釈放の申請を受け入れられることになるという。
▲写真左がギャラン氏。右がロンドン橋の事件で亡くなったジャック・メリット氏
女王による恩赦は25年ぶりで、殺人事件で有罪となった人間が刑を免除されるのは前例がない。
ギャラン氏が起こした事件の詳細
ギャラン氏は2005年4月、市内のバーから帰宅する途中だった消防士の男性を集団で暴行し殺害した。
被害を受けた消防士はこの3年前、地元に住む女性に駐車場で暴行を加え、そのまま放置し死亡させていた。だが逮捕後に殺人未遂扱いで刑を免れており、ギャラン氏は友人と徒党を組んで報復を与えたという。
消防士の男性は顔面の骨折で死亡し、ギャラン氏は有罪に。懲役17年が課せられた。
そんな中、15年後の仮釈放中にテロリストの攻撃を受け、自らの命を危険に晒しながら多くの人々を救った。今回の恩赦をうけ、ギャラン氏は英紙「HullLive」の記事にてこのように語っていた。
「誰も他人の命を奪う権利はありません。私が殺めた男性のご家族には心からお詫びします。
私は人生を取り返すことは決してできない。そして、私の行動に対して厳しい罰が与えられたのは正しいことです。私は自分の罪を受け入れた後、2度と暴力に頼らないことを誓いました。
自身の未来は、他人の決定に依存しています。しかし、自分自身が変わることは、社会への負担を減らしながら未来を変えられる数少ない方法の一つです。
あの悲劇的な日に最善を尽くしてくれた全ての人に感謝し、負傷者が1日でもはやく回復することを祈っています。特に、ルーカスとジョンは非常に勇敢でした。」
今回の恩赦を受け、英紙「Mirror」の記事にて、殺害された男性の息子は「複雑な気持ちだが、ロンドン橋で起こったことは、人は変われるということを示すものでした。」と明かし、釈放を支持していた。
この出来事はイギリスの各種報道メディアで多く取り上げられているが、ロンドン橋での被害者遺族、そしてギャラン氏が起こした事件の遺族、双方の感情が考慮され、様々な形で報じられていた。