記憶を失っても踊ることを愛していた女性
何百、何千時間も練習をして踊りを体に叩き込んできた人ならば、たとえ病気で記憶を失おうとも、体は覚え続けているのだろう。先日、そんな瞬間を収めた動画がSNSで再び話題になり、人々を感動させている。
映っているのは、スペイン・バレンシア地方出身のマルタ・C・ゴンザレスさん。1960年代、ニューヨークのバレエ団に所属し、ファーストダンサーとして活躍していた元バレリーナである。
この度、ゴンザレスさんが亡くなったことをきっかけに、一年前に撮影された映像が再び拡散された。
晩年の彼女は歩けなくなり車椅子状態だった他、アルツハイマー型認知症となり、過去の記憶も失われていた。ところが、現役時代に演じたチャイコフスキーの「白鳥の湖」を聞かせたところ、彼女に変化が。
忘れたはずの踊りを、腕をふって再現し始めたのである。肩や首、指先の動きは、間違いなくバレリーナのものである。
最高の演技をするための長時間の練習、そしてバレエへの愛は、記憶を失っても忘れなかったのだろう。耳にした時、目に輝きが戻る瞬間は、見た人の心を強く打つだろう。
最後は惜しくも体力が尽きてしまったが、彼女の笑顔は格別である。
こちらの動画は、スペインのNGO団体が撮影したもの。認知症ついての意識向上キャンペーン「目覚める音楽」を行っており、音楽をお年寄りに聞かせることによって、どのような効果があるかを調査している。
企画の中では、その人の人生に深い影響を与えた音楽を聴くことで、認知症患者の健康状態や、生活の質を向上させることが期待されている。
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聴覚は過去の記憶を強く呼び起こす。あなたも今一度、昔聞いた思い出の曲を耳にしてみてはいかがだろうか。