恐怖を感じながらも、引き込まれてしまう不思議な写真
View in HQ on Flickr –
http://www.flickr.com/photos/thewickedend/8196009075/in/photostream
突然だが、この写真を見てどう思うだろうか。
底知れない恐怖へ引きずりこまれそうになる感覚に陥りながらも、なぜか見入ってしまう不思議な感情を抱きはしないだろうか。
もう一枚ご覧いただこう。
Holiday chaos has me feeling like this. In other news, two pieces of mine will be…
こちらも同じように、恐ろしい感情を抱きつつも、どこか魅力的に感じる、不思議な写真ではないだろうか。
これらの写真はあるアメリカ人によって撮影されている。実は、この写真が表現しているのは、撮影者自身が悩まされている悪夢である。
畏怖と魅力を同時に抱かされるこの不思議な写真が、現在SNSで話題になっている。
悪夢に悩まされるフォトグラファー
この作品を撮っているのはアメリカ人フォトグラファー、ニコラス・ブルーノ(23歳)だ。
It's cold.
誰もがうらやむほどのイケメンだが、普通の人では耐えがたい日々を送っている。実はこの写真は全て、彼の体験する悪夢なのである。
どういうことかと言うと、彼は15歳の時から、慢性的な睡眠障害・金縛りに悩まされるようになり、恐ろしい悪夢を毎晩見るようになってしまったそうだ。
毎晩そんな恐ろしい悪夢を見るのでは、眠ることもたやすくはない。彼は極度の不眠に陥ってしまい、挙句の果てには鬱状態にまでなってしまった。次第に、「俺は悪魔に取り付かれている」とまで考えるようになったそうだ。確かにそんな夢を毎日見ていると、おかしくなってしまいそうだ…
Last weekend I was lucky enough to celebrate yet another great birthday on this planet. Thank you to those who give me the ambition to continue creating.
そんな彼に一筋の光を与えてくれたのは、高校の先生であった。彼は先生から、「悪夢の苦しみを解き放つために、体験したことを表現して外に発散してみたらどうだ」と薦められた。そこで実際に、写真を通して悪夢を表現してみると、気持ちがちょっと楽になったそうだ。
そこから、彼は写真が持つ無限の力に魅せられ、カメラにのめりこむようになった。現在は、表現することこそが人生だと考えるようになり、悪夢の再現をずっと続けているのだそうだ。
そして悪夢を再現するこの作品は、彼の気を楽にするだけではなく、同じような境遇にいる人に、共有できる安心感を与えるのにも役立っているようだ。
@orangeflower08 ニコラスさん程の重症ではないですが、私も時々なることがあります。
写真一枚一枚から感じる情景が、自分の夢と現実が分からない状態と時と気持ちが良いくらいリンクします。
悪夢の筈なのに救われるように感じるこの写真は、是非ともずっと続けてほしい。— Minori -n @ お気楽写楽 (@Min03b) 2017年2月17日
このような状況に苦しむ人を手助けすることは、なかなか難しい。われわれも彼らが経験する地獄の日々を知ることのできる、すばらしい作品ではないだろうか。
体験した悪夢の数々
彼はFacebookやInstagramで多くの写真を公開している。
Abandoned Abbey and Chapel || Plague Doctor pays a visit
廃墟のような建物にマスクをかぶった一人の人物が立っている。見てはいけないものを見てしまった感じ…
MIR_A
View HQ – http://www.flickr.com/photos/thewickedend/8215749710/in/photostream
椅子に括り付けられ、弓矢で狙われる。息が詰まるような写真。
The Escape Artist
Something kind of different..
http://www.flickr.com/photos/thewickedend/8214684717/in/photostream
なんとか逃げつつも、追われる恐怖。とても臨場感がある。
My video documentary with VICE's Daily Vice is now live! We cover a behind the scenes peek at one of my photoshoots,…
深く暗い闇に引きずりこもうとする人々と、恐怖に怯えベッドにしがみつく男性。助かりたいとする必死さが伝わる。
HQ: https://www.flickr.com/photos/thewickedend/27702342190
This week, I wrapped up my teacher's assistant scholarship…
まるで、命を取り留めている最後の綱を切られそうな、胸が詰まる一枚…
It was an extremely frustrating shoot,…
闇からやってきた人々から必死に逃げているかのような、見入ってしまう写真。
驚くことに、ニコラス・ブルーノはこのような夢を毎晩見ているのだ。だが、それでも負けずに表現し続ける。辛い日々を送っているだろうが、陰ながら応援したい。
畏怖と魅力は紙一重
このように彼の写真は、とても怖いがなぜか引き込まれてしまう作品であった。恐怖を感じるものと、魅力を感じるものは、実は紙一重なのだということを表してくれているかのようだ。
毎晩悪夢に悩まされるという経験は、一般にはなかなか起こりえない。そしてそれ故に、この状況に苦しむ人々に寄り添ってあげるのは簡単なことではない。彼の写真は、そんな人々が苦しむ有様をほんの一部ではあるが知ることができる、とても稀有な写真であると思う。ニコラス・ブルーノには、これからもずっと悪夢の世界の再現を続けてもらいたい。