「世界一長い車」のギネス記録更新、遠近感を破壊するその威容を見よ!・・・そして、その栄光を取り戻すまでの長い道のり。

カルチャー

3月1日、「世界一長い自動車」のギネス世界記録が更新された。その長さはなんと、30メートル超え! 正確には30.54m、ほぼ100フィートである。
26個の車輪があり、最大75人の乗客を収容できる。車の名前はズバリ”アメリカンドリーム号”
遠近感を混乱させる程のその威容、ぜひご覧いただきたい。

常識はずれの機能がてんこ盛り

この車は、1986年に著名な自動車カスタマイザーにより製作されたものをベースに、今回レストアされたものだ。もともと18.28メートル(60フィート)の長さで、26個の車輪で動き、前後にV8エンジンを搭載していた。
これが長い年月をかけて修復、全長がより延長され今回の記録更新となった。
この車には、まさにキングと呼ぶにふさわしい各機能が装備されている。

<主な機能>
・テレビ、冷蔵庫、電話
・ジャグジー、バスタブ
・大きなウォーターベッド
・スイミングプール、飛び込み台
・ミニゴルフコース
・ヘリポート
・最大宿泊人数75名

ヘリコプターで着陸し、ミニゴルフコースでパッティング、それから泳ぎに行き、ジャグジーでくつろぐ。これがすべて車内で可能だ

とアメリカンドリーム号の修復を主導したマイケル・マニング氏は語る。

ヘリポートは鋼鉄製ブラケットで車体に構造的に取付けられており最大5,000ポンドまで耐えられる

とも。動画の2分30秒付近で本物のヘリが着陸する様子が確認できる。シャレでつけている装備ではない。すべて”ガチ”なものなのである。

アメリカンドリーム号の数奇な運命

しかし、このアメリカンドリーム号はかつてニュージャージー州の倉庫に何年も放置され、無残な姿になっていた。それを長い時間をかけて修復し、この威容をとり戻すには大変な苦労が必要だったそうだ。


かつては映画にひっぱりだこ

1986年にギネスに世界一長い車として認定された後、この車は映画出演のためにしばしば貸し出され、様々な映画に登場することになった。
全盛期には人気を博したものの、次第に注目されなくなった。
その後、この伝説の車は何年も人目に触れることなく倉庫の奥に眠っていたのである。やがて錆が発生し、一部は修復不可能な状態となってしまった。

復活までの長い道のり

ここにマイケル・マニング氏という救世主が登場する。彼は、ニューヨーク州ナッソー郡にある自動車技術教育学校”オートセウム”を運営していた。

私はニュージャージーの自動車ボディショーで最初にこの車を見つけだ。だが、それはボロボロのゴミのようだった。落書きで覆われていて、窓が壊れていて、タイヤもペシャンコ。
・・でも、とにかく好きになってしまったんだ

その後、ネットオークションに出品されたアメリカンドリーム号を見たマニング氏は、このリムジンを所有するチャンスだと思いオファーを出した。

出品した企業は、私の提示額が低すぎると思って売りたがらなかったので、彼らと提携してニューヨーク州ナッソー郡に持ち込む契約をした

とマニング氏は言う。
ナッソー群の地域住民の寄付によって修繕し、この車のかつての栄光を取り戻そうという計画であったが、財政難のためあえなく頓挫してしまう。

私の学校で修復するつもりでした。しかし、資金調達が難航しこのプロジェクトは中止となりました。その後、私の学校の校舎裏に7、8年放置されていたんです

結局、オートセウムはナッソー郡との契約を打ち切られ、マニング氏は車の移設先を探すのに苦労することになった。

またネットオークションに出品して、売れなかったらキャッツキル山地に持っている自分の土地に運ぼうと思った。丁寧にシュリンク包装をし、いつでも修復に取り掛かれるようにはしておいた。あきらめて切り刻むつもりにはどうしてもなれなかった。

そして、2019年フロリダ州オーランドにある自動車博物館のオーナーであるマイケル・デザー氏は、ネットオークションに出品されたこの車を見てマニング氏に連絡を取ったという。

デザー氏がこの車を落札した後、この車はレストアのためにフロリダ州に輸送され、マニング氏もここで修復プロジェクトに協力することになった。
ニューヨークからオーランドへの横断のためにアメリカンドリーム号は2つのパーツに分けられ、トレーラーに積み込まれた。
マニング氏はフロリダに向かい、オートセウムの生徒や修理の専門家達の助けを借りてグループで協力して車の修復を始めた。

ポンコツからクラッシックへ

なんとか復活への目星はついたものの、再び走れるようにするための修繕もまた大変だった。

まずはダッシュボード、フロントシート、モーター、トランスミッションなど、運転席をすべて取り出して、車から切り離した。数台の入れ替え用の車を用意して新しいドライブトレインと運転台をまるごと入れ替える大手術が行われた。

さらに、種々の壊れた部品の調達には苦労した、とマニング氏は言う。

GM社製のオールズモビル・ヴィスタクルーザーのルーフを売っているところを探すのは大変でした。たまたまルーフを切って30年間保管していた人を見つけて、譲ってもらうことができた。

さらに外装のほとんどはベース車であるキャデラック・エルドラドの部品を追加で用意し、なんとか補修して完成させた。

輸送費、材料費、人件費など総額で25万ドル(約2千9百万円)を超えたこのプロジェクトは、完成までに3年の歳月を要した。

ついに修復を終えたアメリカンドリーム号は、フレッシュなペイントと派手なホイールセットでいよいよデビューとなった。
しかし、道路を走るわけではない。

長すぎるから、残念ながら道路には出せないんだ。

基本的には展示用だね。

とマニング氏。
この車は、”デザーランドパーク・カー・ミュージアム”のクラシックカーコレクションの目玉として展示される予定だ。

終わらないアメリカン・ドリーム

このすごさは実際に見てみないとわからないよ。生で見ると”うわ~この大きさを見て!“と思いますね

マニング氏は、10年以上に渡り彼の生活の一部であったこの車に携わることができなくなるのは寂しいと語る。

ええ、とても愛着を感じています。みんな、私がレストアしたいと言うなんてどうかしていると思ったようですが、私にはビジョンがあったんだ。

さらにマニング氏は、この車をいつか電気自動車に変える可能性についても映像の中で話している。

この不屈の男の情熱をもってすれば、次なるギネス記録”世界で最も長い電気自動車”の称号も、いつかアメリカンドリーム号のものとなるだろう!

参照元:GuinnessWorldrecordsMashableAutoseum

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ひろしげ

海外渡航経験はハワイ、イギリス、ニュージーランド。大陸に憧れと恐れを抱く典型的島国の人です。趣味は大仏巡り。牛久大仏を擁する茨城県が魅力度ランキング最下位というのは納得できない。

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