『お焦げ』を珍重するという文化は日本のみならず、米食が盛んな地域ではメジャーなものだそうである。
たしかに茶色く色づいたお米は香ばしく何とも言えない味わいがある。
しかし、このパンの焦げ度合いはいくらなんでも・・・。
イングランドの北西部・マンチェスター。ここのハイド・インドア・マーケットのパン屋台で販売されている”スコティッシュ・ロール”(通称ヘビーファイア・ロール)が地元のFacebook グループで共有されている。
この衝撃的ビジュアルを持つパンについては地域住民の中でも見解が分かれており、ちょっとした話題となっているようだ。
元々はスコットランドのベーカリーや新聞販売店で何十年もの間定番となっている商品だという。
見ての通り製造法はロールパンを真っ黒に焦げるまで焼く。それだけである。チョコがけとかココア味とかそんな甘いものでは一切ない。
このヘビーファイア・ロールを”中毒性がある”、”美しい(※うまい、ではなく)”と評する住民もいれば、その見た目をからかったり、危険だと言ったりして、忌避する姿勢を選択する住民もいるという。
このパン屋台「ブレッド・ストール」のオーナーであるデビッド・ブラウン氏は、このロールパンは棚から飛んでいゆくように売れてる!と語っているというが、好みは分かれるということは認めているそうだ。
「これを食べる人は好きか嫌いかのどちらかに分かれる。中間はない。マーマイト(これも高い悪評を誇るイギリス食品)と同じさ!」
地元紙「マンチェスター・イブニング・ニュース」の記者はこのパンの噂を聞きつけ、勇躍試食に向かった。その食レポによると・・。
パン生地がナイフでスライスされ、パリパリと音がするのをじっと待っていると、何とも言えない安心感に包まれる。焼きたてのパンを口に運ぶと、パンの焼ける香りがして、見た目よりおいしいかもしれないと思った。
しかし、それは誤りであった。私は石炭を食べたことはないが、このパンの味が石炭とそれほど違うとは想像できない。さらにロールパンに塗られた健康的なバターのおかげで、私の脳と舌は壮絶な戦いを繰り広げていた。パンを吐いてはいけない。市場の床をこのパンで汚してはいけない・・と。
なんとかその戦いをやり過ごすと、続いてやってきたのは後味の悪さ。喉の奥には、怠け者の父親が長時間放置したバーベキューのような味と感覚とが一日中続く。家に帰りマウスウォッシュを口に含むことでやっと解放されるほど、それは強烈なものであった。
との事である。この記者さんの舌には全く合わなかったようだ。(この食レポの内容もスゴイ・・・)
Facebook グループでの公開とこの食レポも相まって、このロールは生産を2倍にしなければならないほど人気を呼び、さらにスコットランド人のお客さんも故郷の味を求めて店に集まったそうである。
しかし、ここまで焦げたパンを口に入れるなんて考えられない!という人や、発がん性がある焦げた食べ物を食べるのは危険だと警告する人も勿論沢山いる。
2018年にスコットランドの食品基準局は、アクリルアミドという発がん性のある化学物質が存在するため強火で焼いたパンの摂取を制限するよう消費者に警告を発したことがあった。しかし、英国癌研究協会は焦げたトースト、焦げたチップス、クリスピーポテトなど食品からのアクリルアミドは、がんのリスクを高める可能性は低いという見解も出している。
いずれにせよ、食の好みは人それぞれ。マンチェスターやスコットランドに行った際には話のタネに是非一つ、いや一口だけでも試してみる価値はあるかもしれない。
チーズ、ハム、トマト、スープや古き良きスタイルのビールなどが、このパンのお供にオススメだそうですよ!
参照元:ManchestEreveningnews(1)、ManchestEreveningnews(2)、Facebook