一瞬で失敗したスマホ泥棒
ここ数年のスマホ価格の高騰にため息をついている方は多いだろう。ここイングランドでも事情は同様なようだ。
イングランド・ヨークシャー地方のデューズベリーマーケットのスマホショップ「The Phone Market」。盗難の多発に悩む店主はある盗難防止システムを導入していた。
先週の日曜日の夕方、少々挙動が不審な若者が店にやって来た。顔を隠したいのかフードを被っている。彼はスマホを2台手に取って比較してみたい、というので店主が手渡したところ・・・
案の定、彼は手に取ったスマホ2台を懐に、背後のドアへダッシュ!ドアまでの距離はたったの2歩。しかし、そのドアは店主が導入していた盗難防止システムによってリモートロックされていたのであった。
一瞬で計画の失敗を悟った若者は、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに振り向き呪いの言葉を吐いた後、
外で待ってる友達が、やれって言ったんだ!
と主張して2台のスマホを店主に返還した。
店主の寛大な措置が賞賛を受ける
この店の店主はアフザル・アダムさん52歳。この店を24年間経営している。カウンター手前からボタンを押しドアを施錠出来る盗難システムを、2020年に工事費約250ポンド(約4万円)で設置していた。今回の2台のスマホの値段は1,600 ポンド(約27万)相当というから、充分元は取った形である。
この後、この若者が暴力を振るったり、店に損害を与えたりすることのないよう、アフザルさんはドアを開き彼を放免した。後日、この件について警察を呼んだものの特段目くじらを立てるようなことはない、と取材に答えて語っている。
”『なぜ彼を殴らなかったのか』と尋ねる人もいますが、私は決してそんなことはしません”
”このようなことをする人は、理由があってやっているのです。彼らには経済的に恵まれていないなど色々な理由があるんだ”
ともその心情を語っている。そして、店のInstagram には、
「この若者はきっと困っているのだろう。近しい人は彼に手を差し伸べてください」と投稿している。
このアフザルさんの泥棒への応対は、記事を見た人々の感銘を呼んだようだ。
「店主は唯一無二。悲しいことに、彼が強盗に示したような思いやりを目にすることはめったにない」「このような寛大さを見たことがありません。この男が手を差し伸べてくれたことに拍手を送りたい」「私はイスラム教徒ではありませんが、これはイスラム教徒の大多数を真に表しているに違いない。彼の善行が大いに祝福されますように」「ほとんどの人はすぐ警察に電話したでしょうが、店主はずっと落ち着いていて、愛のある対応をした。素晴らしい!」
と、動画のコメント欄にはアフザルさんの応対に絶賛の声が並んでいる。
確かに、動画の中のアフザルさんは始終落ち着いた態度。盗難という非常事態に、愛と思いやりを持って処理する方法を彼は知っていたようだ。この困難な時代、アフザルさんの見事な対応は見習いたいものですね!