戦争を生き延びた“伝説のゲームボーイ”
米国ニューヨーク・マンハッタンのロックフェラーセンタにあるニューヨーク任天堂オフィシャルショップ。このショップの名物の一つに『伝説のゲームボーイ』がある。
そのゲームボーイとは、1990から1991年の湾岸戦争における爆撃で黒焦げになったもの。プラスチック製の外装は炎で焦げ、基板が露出しボタンは溶けている。しかし、なんとこのゲームボーイはこんな状態になってもまだ機能していたという。
The Gulf War Game Boy has officially been retired from @NintendoNYC
After not seeing it on display for a while, I asked one of the workers about it. He told me it was returned to Nintendo’s headquarters in Redmond Washington. pic.twitter.com/wCPJDa3vlp
— VideoGameArt&Tidbits (@VGArtAndTidbits) June 29, 2023
この任天堂ゲームボーイは湾岸戦争当時、米陸軍衛生兵だったステファン・スコッギンス氏が所有していたものである。彼は生粋のゲーマーらしく、危険な戦争にもこのゲームボーイを同行させた。そして、このゲーム機は戦争中、悲劇的な損傷を受けた。爆撃による火事で焼け、写真のとおり前面が無残に溶けた。
しかし、このゲームボーイはそれでもなお機能していたのだ。
スコッギンス氏はアメリカへ帰国後、任天堂アメリカにこのゲームボーイを持ち込んだ。任天堂は「『砂漠の嵐』特別の好意」と称し、これを新品のゲームボーイと交換したという。そして、この焼け焦げたゲーム機はニューヨークのニューヨーク任天堂オフィシャルショップに飾られた。
そして、それから30年もの間このゲームボーイは店の人気者であり続けた。メンテナンスとして画面を交換したり、ときどきバッテリーを交換したりする以外にはほとんど手を加えられていないという。
アメリカの任天堂ファンは戦争の英雄に敬意を表し懐かしむために同店を訪れ、まさにショップの名物の一つとなっていた。
“伝説のゲームボーイ”の今後は如何に
しかし先月29日、Twitterユーザーの『VideoGameArt&Tidbits』氏が最近このショップを訪れたところ、この展示品が見つからなかった。
彼が同店のスタッフから聞いたところによると、このゲーム機は撤去されワシントン州レドモンドにある任天堂アメリカ本社に送り返されたとのことだった。
そのスタッフは、この伝説的なゲーム機が今後この店に戻ってくるかどうかはわからない、と述べたという。また任天堂もそれについて公式な声明を出していない。
『VideoGameArt&Tidbits』氏がこの件を報告したツイートは話題を呼び、現時点で1,5万件ものいいねが付いている。
この伝説の『湾岸戦争ゲームボーイ』の最終的な運命は現時点では定かではない。しかし、現代の歴史の一幕を記憶する生き証人として、美術館や博物館に収蔵されるべき来歴を持つ物品だ。
数十年、数百年後にはこの時代の息吹を伝える貴重な資料となることは間違いない。きっと任天堂はしかるべき措置を取っているに違いないだろう。
