黒人少女だけメダルがもらえなかった
2022年3月にアイルランドのダブリンで開催された体操大会でのメダル授与式。当時の動画が最近になってSNSで公開され、そこに映っていた信じ難い光景に、今、世界中から批判の声が殺到している。
一列に横並びになっている体操選手たちの首に、女性が次々とメダルをかけていくのだが、黒人の少女だけはメダルを授与されずに順番を飛ばされてしまった。その後も、女性は白人の少女たちにメダルをかけ、黒人の少女の方を気にかけることもなく何事もなかったかのようにその場を去ったのだ。
メダルをもらえることに胸をはずませ、ニコニコと笑顔を見せていた少女は、自分だけメダルをもらえなかったことに困惑した様子を見せている。また、それを不思議に思ったのだろうか。隣にいた少女が何やら声をかける姿もあった。
結局、黒人の少女は表彰されないまま、授与式は終了したという。
人種差別に世界中から批判殺到
それから約1年半が経過したが、今月この動画が拡散されたことで「これは人種差別だ」と世界中から批判の声が相次いだ。これを受け、アイルランド体操協会は22日、黒人の少女の順番を飛ばしたことは悪意のないミスであり、また、8月中に双方が合意して問題は解決しているという声明を出したという。
その後、騒動が大きくなったことで、25日、新たに「あの日起きたことはあってはならないことであり、深くお詫び申し上げます。その日以降に起こったことがさらなる動揺を招いたことも申し訳なく思っています。このようなことは二度と起こらないようにします。」とコメントを発表したが、一部メディアによると、少女の母親はアイルランド体操協会が公式な謝罪をしていなかったなど対応を非難し、すでにこの問題についてスイスの体操倫理財団に訴えたと伝えている。
少女は式典後にメダルを授与されたというが、公衆の面前で明らかな人種差別をされたことに深く傷ついたことは明らかである。あの場にはカメラマンや大会関係者など多くの大人がいたにもかかわらず、誰も介入しなかったこともまた信じ難い。米体操選手シモーヌ・バイルズさんは「いかなるスポーツにおいても人種差別の余地はない」と語っているが、少女が、そしてすべての子供たちが差別のない世界で生きていけるような社会を築き上げていくことは、今もそして今後も大きな課題となることだろう。