世界中で愛されているネコ。これほど身近な動物なのだから、ネコ科の動物についてはもうほとんど調べ尽くされている――と思ってしまう。
ところが南米ボリビアで、科学的にこれまで知られていなかった新種のネコが確認された。しかも現生のネコ科動物で新種が正式に記載されるのは、100年以上ぶりだという。そしてこのネコ、なかなかかわいいのである。
National Geographic公式Instagramでは、保護施設で暮らしている実物のティルカヨの動画が公開されている。「weird cat(変わったネコ)」について保護施設から連絡を受けたことが、今回の発見の始まりだったという。
家猫より小さな「ティルカヨ」
新たに確認されたのは、南米に生息するタイガーキャットの仲間。学名はLeopardus tilcayo(レオパルドゥス・ティルカヨ)と名付けられた。「ティルカヨ」はもともと地元住民がこのネコを呼んでいた名前で、研究者たちもそれを学名に採用した。
体長はおよそ46cm、体重は約1.4kg。一般的な家猫よりかなり小柄だが、その姿はなかなかワイルドだ。薄い茶色の毛にヒョウを思わせる黒っぽい斑点模様が入り、写真だけを見ると「ヒョウをそのまま子猫サイズに縮めた」ようにも見える。
最初は「変わった猫」だった
このネコが科学者に知られるようになった経緯も面白い。2016年、ボリビアの野生動物保護施設に一匹のネコが持ち込まれた。もともとは地元の男性が森の近くの道路で子猫を発見し、普通の飼い猫だと思って自宅へ連れ帰ったのだという。
しかし、どうも普通のネコとは違う。保護施設から連絡を受けた生物学者が調査を始め、南米各地のタイガーキャットのDNAを詳しく比較した。その結果、このネコは既知の種とは遺伝的に異なる、独立した種であることが判明したのである。
約140万年前に別の道を歩み始めた
研究チームが南米に生息するタイガーキャット類のDNAを解析したところ、ティルカヨの祖先は他の近縁種からおよそ140万年前に分岐したと推定された。
つまり最近突然現れたネコではない。人間がその正体に気づいていなかっただけで、長い間ボリビアの森で独自の進化を続けていたのである。
まだ分からないことだらけ
ティルカヨが暮らしているのは、アンデス山脈東側に広がるボリビアのユンガスと呼ばれる地域。湿度が高く、山の斜面を雲が覆う「雲霧林」が広がる、生物多様性の非常に豊かな場所である。
ただし、新種として確認されたばかりだけに、その生態についてはほとんど分かっていない。糞から小型げっ歯類の痕跡が確認され、カメラトラップからは夜行性の可能性も指摘されている。野生に何匹いるのかさえ、まだよく分かっていない。
2026年になっても「新しいネコ」がいた
昆虫や深海魚ならともかく、ネコ科の動物である。それが2026年になって新種として確認されたというのだから驚かされる。
しかも地元の人々にとってティルカヨは、突然現れた未知の動物ではない。そこにずっと暮らしていたネコに、科学がようやく追いついたのだ。
地球上の動物は、もうほとんど発見され尽くした。そんな気になってしまうが、どうやら世界は、まだまだ人間が思っているより広いようである。








