LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)という言葉は、今の時代だからこそ浸透し周囲に受け入れられるようになったが、ほんの少し前までは理解されないどころか差別の対象となっていたのはご存じだろう。
元兵士が長年偽り続けてきた自身の性
イギリスの小さな町で生まれ育ったピーター・デイヴィスさん。彼は1945年から1948年にかけて世界第二次大戦で戦った元兵士でもある。戦後、ピーターは結婚し、6年前に妻が他界するまで生涯を共にしてきた。しかしそんな夫婦にはある秘密があったのだ。
60歳で妻にカミングアウト!妻の反応はいかに・・・。
実はピーターは3歳のころから自身の性に違和感を感じていた。しかし当時は性同一性障害などという言葉はなくピーター本人にも何が起きているのか理解できなかった。それでも妖精になりたいというと母親は嫌な顔ひとつせず妖精の羽をピーターに作ってくれたのである。
21歳で結婚したピーターだったが、60歳のとき男性が女装するテレビ番組をみたのをきっかけについに妻にカミングアウトしたのだ!結婚して実に39年が経過していた。
妻は嫌がるどころか、これまで苦しんだピーターに同情し自分の宝石やドレスをピーターに差し出したのである。そしてあらゆる面で献身的なサポートをしてくれたのだという。しかし時代の風潮もあり、このことは夫婦二人だけの秘密にしようと固く誓ったのである。
「パトリシア」と改名し女性として生きる現在
もし兵士時代に周囲にバレていたら刑務所送りだったと話すピーターは御年90歳。頑なに秘密を守り続けた夫婦だったが時代の流れとともに友人や近所の人にも受け入れてもらえるようになった。
「なにも心配しなくていいよ!君が幸せなら僕たちもそれが一番だ!」
現在かかりつけの医師にホルモン剤を処方してもらい、医療記録の性別は女性と記録されている。それとともに幼い頃から憧れていた「パトリシア」という名前に改名もした。実は、亡き妻はピーターがカミングアウトして以来ずっと、彼のことを「パトリシア」と呼んでいたのだ。
昼下がり、ブラウスとスカートで町を歩くパトリシアの姿がある。長年偽り続けた人生は苦しく、女性として生きることができる今は本当に素晴らしいものだと話す。何をするにも遅すぎることはない。嬉しそうにメイクをし服を選ぶパトリシアの姿は生き生きしている。亡き妻もその姿をみて喜んでいるに違いない。