生きる女神様
「生き神」というと、私たちの生活からは少しかけ離れた存在のように聞こえる。
だが、現代でもネパールには初潮を迎えるまでの少女を「生き神」として選出する文化が残っている。
そして首都カトマンズで9月28日に、新たな「生き神」として3歳児のトリシュナちゃんが選ばれ、任命の儀式がとり行われたのである。
Warga berdoa untuk Dewi Kumari Nepal yang baru, Trishna Shakya, pengganti pendahulunya yang sudah memasuki pubertas https://t.co/dpPmsK6GQD pic.twitter.com/Cr8yD7rE6h
— Xinhua Indonesia (@XHIndonesia) 2017年9月30日
こちらがトリシュナちゃん。あどけないかわいらしさが写真からもうかがえる。
わずか3歳ということに驚きを隠せない方もいることだろう。
彼女がどうやってこの若さながら「生き神」となり、どのような日々を過ごしていくのか書かせていただこう。
クマリの選出方法
そもそも、ネパールの生き神を「クマリ」と呼ぶのだが、このクマリになるためには32の条件がある。
その一部を紹介しよう。
・健康である
・すべての歯が欠けていない
・菩提樹のような身体
・牛のようなまつげ
・獅子のような胸
・鹿のような脚
・アヒルのように柔らかく透き通った声
・黒い髪と目
この他にも動物の頭部と共に暗室に閉じ込められても泣かないなどの過酷な審査があるそう。実際トリシュナちゃんも生贄の水牛を見ても泣かないという審査を突破したようだ。
もちろん「神」と呼ばれるからには普通の人間では許されないことは承知だが、これらの審査を突破するとはトリシュナちゃんは常人のレベルを超えている!!
クマリとして生きる
クマリに選ばれた以上は、特別に任命された使用人の世話を受けながら宮殿に住むこととなる。そして、特別な日以外の外出は許されない。
なんと、クマリが外出できるのは年にたった13回のみである。また、地に足を付けてはいけないという決まりもあるために、移動の際は担いで運ばれる。
まだ親に甘えたいであろう3歳児にも関わらず、家族に会うことも容易ではなくなるのだ。
ただ、クマリ退任後も毎月お金が振り込まれるそうで、両親としては安心するような寂しいようなで複雑な心境のようだ。
また、観光客などは拝観料を支払えば、トリシュナちゃんが窓から顔を出す姿が数秒間拝めるらしい。
いかに「クマリ」としての生活が普通の3歳児と違うかがお分かり頂けるだろう。
クマリの是非
また、クマリには教育、食事、行動の自由がないために、「児童虐待ではないのか」という声も上がっている。
伝統や宗教の行事と言ってしまえばそれまでなのだが、トリシュナちゃんがわずか3歳ということもあり本人の意思も問えない。
年を重ねるにつれてクマリであるということに、どのような感情を抱くかというのは難しい問題である。
ちなみに、前任者は12歳で初潮が来てクマリを退任したそう。また、乳歯が抜ける際に出血して退任したという事例もあったらしい。
それゆえに、いつまでトリシュナちゃんがクマリの地位につくかは不明だ。
彼女がネパールの生きる女神として活躍していく姿を、遠くからではあるが見守り続けたい。