アメリカの首都ワシントンD.C.から南へ約50kmの位置に、興味深い場所がある。
ポトマック川という大きな川があるのだが、そこのマローズ湾という場所には、約200隻もの軍艦が放置されているのだ。
アメリカでは「ゴースト・フリート(幽霊船団)」と呼ばれている。
湾に放置された船団をボートなどで見学できる!
↑このようにカヤックやボートに乗って見学できる!
↑沈んだ船体の間を縫うように進むカヤック。
↑船から植物が生えている。多くの船は、自然と一体化してしまっている。
現地では、この自然と一体化し放置された軍艦を見るためのツアーが組まれているのだ!
マローズ湾にはなぜ多くの軍艦が残っているのか?
このマローズ湾周辺には、多くの造船所があった。
ここにある船は、古くは南北戦争時にさかのぼるが、多くは第一次世界大戦の時、連合国側の支援のために作られたものだ。多くの船は木造の蒸気船であった。
アメリカは短期間のうちに世界最大の造船国となったのだ。いわゆる戦争特需というやつだ。
造船所は、コミュニティの拡大、経済の発展に貢献したようだが、1929年からの大恐慌の煽りを受けて閉鎖された。
船は安値で売りに出されたりしたが多くが使われないまま残り、必要な部品だけ回収され、沈没処分となってしまった。費用がなかったのだ。後に、いくつかの船舶会社が引き揚げ作業を試みたが、失敗に終わったようだ。
ほぼ1世紀が経過した現在、自然は多くの船を飲み込んでいる。船体からは木や草が生え、川底に沈んだ船体を魚たちは住みかとし、それを狙って水鳥やワシも生息している。また、ビーバーやカワウソもいるようだ。
人間も、ここの魚をとる漁師として恩恵を受けている。
幽霊船団は自然と共生し、多様性を生み出しているのだ。
海洋保護区への申請
マローズ湾は、国の海洋保護区に認定されるように申請を受けている。
認定されるかどうかは、来年の2018年に決まるようだ。オバマ大統領が2015年に、様々な保護区の候補地を発表したが、海洋保護区の指定は、2000年以降は初めてである。それもあって、マローズ湾は今注目を集めているのだ。
もし海洋保護区に認定されると、今までよりも保護活動が強化され、マローズ湾のあるメリーランド州にとっても大きな観光資源となるのだ。
ただし、漁師は新たな規制が制定されはしないかと心配してもいるようだ。
約100年前に放置された幽霊船団と豊かな自然区域、、、冒険好きには、たまらない旅行先ではないだろうか。
SNSで「#mallowsbay」で検索するといろいろな写真や動画が見ることができるぞ!
参照元:Instagram1、2、3、4、National Marine Sanctuaries、Atlas Obscura、BBC NEWS、CNN