始まりは号泣している男の子の動画
12月8日、アメリカ・テネシー州ノックスビルに住むキンバリー・ジョーンズという女性が、ある動画を投稿した。
写っているのは、彼女の息子である11歳のキートン君。帰りの車の中で、とても辛そうに泣いており「どうして僕がいじめられなきゃいけないんだ」と訴えている。
This is Keaton Jones, he lives in Knoxville and he has a little something to say about bullying.pic.twitter.com/coyQxFp33V
— Everything TN (@Everything_TN) 2017年12月9日
見た目をけなされ、給食の牛乳をこぼされたり、食べ物をかけられたり・・・学校で起こった哀しいことを涙ながらに明かすキートン君。
この動画に胸を痛めた多くの人がシェアし、2000万回も再生された。もちろん一般のユーザーだけではない。有名人の間でもキートン君に寄り添う投稿が次々と現れだした。近隣の大学から始まり、NFLの選手、そしてスヌープ・ドッグといったセレブやアーティストも、「#StandwithKeaton.」(キートンと立ち上がろう)というハッシュタグでつぶやきだしている。
中には、あのジャスティンビーバーもコメントを寄せている。
「友達になろうぜ!僕にDMを送ってチャットしようよ!愛してるぜ兄弟!」
更にケイティ・ペリーなどなど・・・子供たちのあこがれているトップクラスのアーティストも応援に駆け付けている。
This broke my ? today. Please be kind to one another. #standwithkeaton https://t.co/8XBbFmnuc1
— KATY PERRY (@katyperry) 2017年12月10日
「今日は心が痛いわ。人には優しくしましょうよ。」
このようなたくさんの励ましの声が広がり、GoFundMe(クラウドファンディングサイト)でも、いじめられている子供たちの力になろうと支援をする動きが高まった。
しかし、その陰でこの動画を疑う声がどうやら現れつつあるという。その原因となっているのは、キートン君の母親であるキンバリー・ジョーンズ氏の存在だった。
差別主義者であると批難する声が
Facebookのユーザーたちの怒りを買ったのは、ジョーンズ氏のページで発見された古い投稿である。
彼女が掲げているのは、南北戦争で使われていた南軍旗。現代においては、白人至上主義団体の象徴として使われている旗である。その他にも、彼女のページで黒人差別的な投稿や、家族ぐるみで差別的な活動を行っていたことが明らかになった。
しかも、これが明らかになったのは有名人による投稿が行われてからだ。NFLの黒人選手と交流し励まされている様子も公開されていることから「差別主義者が黒人からの支援を受けて喜んでいる」と批判が殺到している。
現在、ジョーンズ氏のフェイスブックページは削除されている。炎上が続く中、12日の朝、アメリカの報道番組「グッドモーニングアメリカ」にて、ジョーンズ氏とキートン君がインタビューに現れた。
Backlash over viral bullying video of Keaton Jones as mother's alleged online posts with the Confederate Flag spark new questions: https://t.co/MHgc3aJZjl pic.twitter.com/5RWnXqpkJP
— Good Morning America (@GMA) 2017年12月12日
ジョーンズ氏は番組内で南軍旗の写真について、「これは差別主義を皮肉るものであって、おもしろおかしく撮影しただけです。取り消せるものなら、もうやってます。」と語っている。
また、CBSのインタビューにおいても彼女は人種差別とは無関係であることを強調している。むしろ差別主義者じゃなかったから周りからいじめられていた、ということも主張していた。
このインタビューにより、状況は更に複雑化している。支援を集めていたGoFundMeのキャンペーンには問い合わせが殺到し、「キートン君のいじめは母親とは全く無関係」であると追記していたが、批判により応募を締め切った。この時点で、キャンペーンには約680万円(600万米ドル)にのぼる金額が集まっていたという。
SNS上ではこのような批判が集まっている。
・息子の不幸を利用して金もうけをしようとしているんじゃないか?
・嘘か本当かはっきりしてよ。
・差別主義者だったからキートン君はいじめられていたんじゃないのか?
一瞬で有名になりヒーローとなったキートン君は、母親の投稿一つで悪役に突き落とされてしまった。もちろん中には、彼がいじめられている事実と、母親の差別的な側面は切り離して考えるべきだと主張する声も多い。
「いじめは許せない」と応援していた人々が、「差別主義者に対する正しいいじめ」だとして一人の母親を攻撃しているというのは、信じられない構図である。2人はどうなっていくのだろうか・・・アメリカじゅうから大きな注目が集まっている。