正月は甥っ子が遊びに来ていた。
甥っ子は2歳くらいの幼子なので、誰かがずっと付っきりで面倒を見ていなければならず、半日ほど俺が面倒をみることになった。
ちなみに俺は”ミスター味っ子”ならぬ”ミスター甥っ子”と呼ばれるほど、甥っ子の面倒を見るのは得意である。
さっそく、何をしようか?と尋ねると、絵が描きたいというような仕草をしてきたので、紙と24色のクレヨンを渡すと、いきなり白い紙に白いクレヨンで絵を描きだすという奇才ぶりを発揮し、平成の岡本太郎の誕生を予感させた。
他にも突然、机をべろべろ舐めだしたり、何かに取り憑かれたかの如くぴょんぴょん跳ねだしたり、うんちをして、パンパンになったオムツからとてつもない異臭を放ちながらも「うんちしてにゃい、くさくにゃい」と動かぬ物的証拠がありながら罪の言い逃れをして動き回ったりしてとても大変だった。
そんなクレイジーボーイの甥っ子と遊ぶのも一段落し、母親が用意した梨を食べていたら、今度は俺の腕をバシバシ叩きながら「ぺあだねえ~」と言い出した。
ぺあ?と思いながらも「これは梨だよ、な・し、ぺあじゃないよ」と丁寧に教えてあげてもまたしても「ぺあだねえ」と言ってきた。
その後も「いや、梨だよ、ほら、ぺあ要素ないでしょう?」といくら言っても「ぺあだねえ」「ぺあだねえ」と言って聞かなかった。
悟空をカカロットと呼ぶべジータしかり、マクドナルドをマクドと呼ぶ関西人しかり、トイザらスのことを頑なにザウルスと呼ぶうちの母しかり、人は一度決めたことはなかなか曲げないものだ。
もう好きなように呼ばせよう。
「きっとこれは犬をワンワンと呼ぶような幼子特有のアレだろう」
そう自分の中で納得することにした。
兄夫婦と甥っ子が帰宅してから、ふっとそのことを思い出し、何とはなしに「梨 ぺあ」で検索をかけると
ま、まさか。