あるカツオドリの孤独
今、人と人の関係が希薄化しており、”孤独“が深刻な社会問題となっている。
日本では孤独死を防ごうという動きが高まっているほか、イギリスでも孤独担当大臣というポストが新設され、対策が急がれている。それほどに、世界中は寂しさという病に蝕まれているのだ。
しかし、寂しさに押しつぶされているのは人間だけではない。自然界の動物たちもまた、孤独によって死んでしまうのである。
今回お送りするのは、野生の鳥が人形の恋人の隣で亡くなるという悲しいニュースである。
この鳥は、ニュージーランド・マーナー島に住んでいるカツオドリ。世界中で個体数が減り続けており、絶滅が危惧されている種である。
マーナー島では1970年代頃からカツオオドリが観測されていなかった。
そこで、地元の環境保護団体である「マーナー島友の会」は、もう一度カツオドリを島に呼び戻そうと、1997年にコンクリート製の人形を設置したという。
すると2013年、取り組み後初めてとなる、一羽のカツオドリがやってきたのだ。
そのカツオドリは、人形のコロニーに巣をつくり暮らすようになり、ニゲルという愛称で親しまれるようになったという。
人形とはいえ、ニゲルは仲間に囲まれて満足げだったようだ。更に、そのうち一体の人形に惚れこみ、妻に選んだのである。
こうしたことから彼の存在は世界でひそかに話題になり、「ひとりぼっちのニゲル(No mate Nigel)」というあだ名で広まり始めたのである。
哀し過ぎる最期
こうして一羽で暮らし続けるニゲルの元に、12月24日、思わぬクリスマスプレゼントがやってきた。なんと、島に三羽のカツオドリが住みつくようになったのだ。
初めて本物の仲間と触れ合う機会ができ、マーナー島友の会のメンバーも応援していたという。しかし、残念ながらニゲルは彼らと友だちになることができなかったのだ。
この哀しい出来事があった数週間後、ニゲルは人形の仲間と恋人の隣で亡くなっていたのだという。
あまりにもショックな出来事に、友の会のメンバーであるクリス・ベル氏はこのようにコメントしている。
ニゲルは人形の仲間に対してとても誠実な鳥でした。ですが、欲求不満だっただろうと思います。
彼が寂しかったかどうか、定かではありませんが、2年間にわたって仲間にどれだけ尽くしても、いつしか何も返ってこないことに気づいてしまったのです。
私はニゲルの希望のない孤独な状況にとても共感していました。
こう語ったクリス氏もまた、マーナー島のレンジャー隊として一人で暮らしている孤独な人物だという。それだけあり、ニゲルの幸せを誰よりも願っていたに違いない。
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やっと出会えた本物の仲間と心を分かち合う事が出来なかった経験は、ニゲルを深く気付つけたことだろう。
たくさんの仲間や恋人に囲まれ、夢の中で亡くなったニゲル。彼の気持ちはどういったものだったのだろうか・・・。
参照元:The Guardian、Facebook、