毛が・・・けがの功名
古今東西・老若男女を悩ませる「薄毛」。古くからいじりやすい身体的特徴としてお笑いのシーンでは重宝されてきたが、そのいじりやすさゆえに人をたやすく傷つけてもしまう、諸刃の剣である。
「クソ・・・自分に髪の毛さえあれば・・・」
そう思う薄毛の人も、少なくないだろう。
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そんな人に朗報である。もうすぐ、薄毛の画期的新薬が開発されるかもしれないのだ。
今月8日、イギリス・マンチェスター大学の研究グループによって発表された論文によると、シクロスポリンAという物質が、毛を生やす器官(毛包)に作用し、育毛を促進させる可能性があるということである。
このシクロスポリン。一般的には、臓器移植した患者に対して、拒絶反応を抑制するために利用されているものである。
しかし複数の副作用があることが問題となっていた。そしてその副作用の中のひとつとして、「毛が増加する」というものがあったのだ。
今回の研究はシクロスポリンがどのような仕組みで育毛に関与するのか、遺伝子解析や毛包組織を使った実験によって解明したもの。
論文によると、シクロスポリンは、毛包などの組織の成長を阻害するタンパク質(SFRP1)の働きを抑えるそうだ。
論文の筆頭著者であるネイサン・ホークショー博士は語る。
今までこういった分子が、薄毛の治療成分として検討されることはありませんでした。しかし、これが育毛に役立つという事実は、その「潜在能力」を引き出したという点で非常にエキサイティングなことです。この研究は将来、薄毛に悩む人々に実質的な希望をもたらすでしょう。
このニュースを受け、ネット上には、「ぜひ臨床試験に参加させてくれ」「女子は男のハゲなんて気にしないし、ちょっとハゲてたほうがセクシー」「←お前の個人的意見など聞いていない」などなど、男女を問わず多くのコメントが寄せられていた。
でも、「副作用」から薬なんて・・・本当に大丈夫?
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さて、副作用から薬を開発するなんて、面白いけど「本当に大丈夫なのか」と思った方もいるだろう。
実は、副作用をきっかけに新薬の開発がはじまったという例は過去にもあるのだ。
最も有名なのが、勃起不全改善薬バイアグラである。
バイアグラの有効成分はシルデナフィルというもの。シルデナフィルはもともと、狭心症を治療するために開発が始まった。血管を拡張させ血流をよくする成分である。
しかし、臨床試験において、狭心症への治療効果はいまひとつであった。
その代わり、血流がよくなることによる副作用として、被験者の勃起不全が治るという棚ぼた現象が起こったのだ。これをきっかけに、シルデナフィルは勃起不全改善薬として改良・開発されることになったのである。
それにしても、副作用から薬を開発するとは、まさにけがの功名である。
現在、バイアグラが医薬品として普通に流通していることを考えると、シクロスポリンが薄毛治療薬として世に出まわる日もいずれやって来そうだ。