【10月打ち上げ】水星探査機「みお」の愛称決定秘話について、JAXAが色々教えてくれた!

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みんなに知ってほしい!水星探査機の愛称決定秘話

皆さんは、日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)と欧州宇宙機関が共同で行っている水星探査プロジェクト「ベピ・コロンボ」をご存知だろうか。

実は水星という惑星は、宇宙計画の中では非常に地味な立ち位置に存在している。

太陽に近く、自転が非常に遅いため、表面温度が427℃から-173℃まで変化するというトリッキーな星。火星や金星と比べてテラフォーミングは難しいとされており、宇宙計画の主要な対象にはならなかったのである。

しかし、今まで探査されてこなかったゆえに、興味深い謎がたくさん残されている星でもあるのだ。

2008年にメッセンジャーが撮影した水星

水星磁気圏探査機「みお」

今年10月、ベピ・コロンボのプロジェクトとして、新たな水星探査機が打ち上げられる予定である。それに先立ち、2月から4月までの2ヵ月間に、探査機の「愛称」を公募するというキャンペーンが行われた。

今まで目立たなかった水星探査計画を、もっとたくさんの人に知ってもらいたい!

この願いからか、JAXAは「意外な」コラボレーションを実現させたのだ。

美少女戦士セーラームーン。1980年代に生まれた女の子ならば、誰もが知っているだろう。

セーラー服をモチーフにした戦闘服に身をつつみ、闘う女の子達。その名前は、「セーラームーン(月)」や「セーラーマーズ(火星)」「セーラーヴィーナス(金星)」など、太陽系の惑星(と衛星)の名を冠している。もちろん、「セーラーマーキュリー(水星)」もメインキャラクターの一人である。

社会現象を巻き起こすまでに大ヒットしたアニメ。その作者を愛称選考委員に加えるとは、JAXAもなかなか攻めるではないか・・・!

キャンペーンの効果か応募総数は6000を超え、先日、ついに愛称が決定した。その名は「みお」。なんとなく美少女を連想させる、かわいらしい名前である。

この愛称決定までの経緯についてJAXAに質問してみたところ、愛称選考委員会のメンバーでもあり、「みお」プロジェクトサイエンティストの村上豪氏より回答を頂く事ができた。

─ 今回探査機の愛称を公募にしたのはなぜでしょうか。

科学探査というと、難しそうという印象をもたれることがしばしばあります。今回は特に水星という一般にあまり馴染みのない惑星がターゲットのため、あまり身近な存在として感じて頂けないのではないかという危惧がありました。
しかし、「みお」は開発期間も15年とJAXA最長のミッションであると同時に国際協力による大型計画であり、国境を越え人類規模で水星の謎に挑む壮大な挑戦です。
この挑戦を広く一般の方にも知って頂き、かつ親しみをもって頂くために科学衛星としては稀ですが愛称の一般公募をさせて頂くこととしました。

─ 名称の選考委員に漫画家の武内直子さんの名前もありますが、どのような経緯でこのコラボレーションが生まれたのでしょうか。

水星は太陽系の惑星の中でもあまりよく知られていない地味な存在ですが、マーキュリーという単語は「セーラーマーキュリー」のおかげで知っている人が多い(特に30代以下の若い世代)ということを知りました。しかも「セーラーマーキュリー」のことは海外のプロジェクトメンバーもよく知っていました。
そこで、マーキュリーをより身近な存在にして頂いたことへの尊敬と感謝から、作者である武内直子先生へ本キャンペーンへの参加を打診し、ご快諾頂いたという経緯です。

─ 武内さんが選考委員に加わることにより、これまでの愛称決定と比べて何か変化は起きましたか。

これまでの科学衛星では関係者内で愛称を決定することが主でしたが、今回は武内先生にご参加頂いたことで、より一般の方が親しみやすい、イメージを持ちやすいという視点から愛称を選定することができました。

─ 「みお」という名の評判のほうはいかがですか。

ありがたいことに「いい名前だ」というご意見が多く、ご好評を頂いております。素敵、可愛い、親しみやすい、響きがよいなどの声のほか、愛着のある同名のゲームやアニメのキャラクターと重ねてご声援を多く頂いています。海外からも好評頂いており、これからもますますご声援頂ければ幸いです。

もうすぐ打ち上げられる「みお」。ステキなのはその愛称だけではない。長期にわたり試行錯誤を重ねて開発された日本と欧州の英知の結晶でもあるのだ。その活躍をぜひ、期待したい。

取材協力:村上豪氏(JAXA宇宙科学研究所)、JAXA広報部
参照元:JAXATwitterYoutube

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yamada

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