神秘・・・毒を持つ美しい海の生き物たち
乙姫様のごちそうに、タイやヒラメの舞い踊り ─ 童謡・浦島太郎の一節にも見られるように、海中の生き物というのは、美しく、幻想的に描かれるものである。
確かに海の生物は、我々が見慣れている陸上生物とはかけ離れた、神秘的な姿かたちをしている。しかし、安易に近づいてはいけない。美しい外見とは裏腹に、非常に危険な毒を持っている可能性があるからだ。
以前edamame.では「美しすぎる猛毒生物」としてカツオノエボシを紹介した事があるが、毒を持つ危険な海の生物は、まだまだたくさん存在する。
今回、特に日本で被害が多い海の有毒生物を、公益財団法人・日本中毒情報センターが一般向けに公開しているデータベースよりピックアップした。
ハナガサクラゲ
主な生息地:日本中南部沿岸
刺胞毒をもつ。死亡例はないが、人に激痛を感じさせる。
ウメボシイソギンチャク
主な生息地:陸奥湾から九州
刺胞毒をもつ。強い溶血作用がある。(溶血:赤血球が破壊されること)
ハナガササンゴ
主な生息地:館山湾以南の太平洋岸・九州西岸
刺胞毒をもつ。かなり強い水溶性の毒である。
ハブクラゲ
主な生息地:5~10月頃の沖縄県内ほぼ全域
刺胞毒をもつ。ほぼ透明で視認しずらい。刺されるとショックを起こすこともあり、死亡例も報告されている。
ヒラタエイ
主な生息地:本州中部以南、まれに北海道
尾部に1本(まれに2~3本)の毒棘をもつ。棘が鋸歯状のため裂傷になりやすく、繰り返し刺されることもある。
ミノカサゴ
主な生息地:本州中部以南、太平洋の熱帯部、紅海
背びれを中心に毒棘をもつ。攻撃的な魚で、しつこく追い回すと激昂し、人に向かってくることがある。
オニダルマオコゼ
主な生息地:太平洋、インド洋の浅海
背びれに毒棘をもつ。岩に擬態する。毒性は強く、死亡例あり。抗毒素血清はオーストラリアが製造しているが、日本国内では入手困難。
ギンザメ
主な生息地:北海道から本州、朝鮮
第1背びれの前端に毒棘をもつ。毒性は強い。
応急手当
・刺傷部を海水でこすらずに洗って、刺胞を落とす。真水・温湯・アルコール・酢は、刺胞を発射させるため使用しない。それでも残存する刺胞などは、ゴム手袋をして手で除去する。
・ハブクラゲの場合は、直ちに食酢を大量にかけ、30分間浸すようにして、刺胞を洗い落とす。
・刺胞を完全に落としたら、カツオノエボシ・非熱帯性のクラゲ・イソギンチャクの場合は、患部を45℃程度の湯に浸す(最長20分まで)と痛みが緩和される。ハブクラゲは該当しない。
・刺傷部を洗浄し、棘が残っている場合は除去。患部を45℃程度の湯に30~90分浸す。
病院に受診する際は、刺した生物の種類・刺されてからの経過時間などの情報があると治療がスムーズに行きやすい。
よって、分かる限りの情報をきちんと説明できるようにしておくことが望ましい。
「危険な生物」と聞くと、ライオンやトラなどの大きな肉食動物を思い浮かべがちであるが、実は海中の小さな生き物たちも、人を簡単に殺してしまうことができる。
おそらく生存競争を生き延びるための進化の形であり、決してあなどることはできないのだ。
参照元:日本中毒情報センター