「これ、どこまでが青?」この問いが、人の意外な性質をあぶり出す

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人間の判断基準は環境により容易に変化する

人は常に何かを判断している。この色は「青」か「紫」か、この人は「かっこいい」か「かっこよくない」か、この記事は読む価値が「ある」か「ない」か ─ そしてその判断の基準は絶対的なものであると考える。

しかし、実は、人間の判断基準は環境により容易に変化してしまう、そんな研究結果が、学術雑誌の最高峰「サイエンス」誌に掲載された。

この研究で、まず最初に行われた実験は、「完全な青色」と「完全な紫色」の間に存在する「微妙な色」の1000個のドットを被験者に見せ、それが「青」か「紫」かを判断させるというもの。

結果として、被験者は、全体の半分のドットを「青」とし、残り半分のドットを「紫」と判断した。

次に研究者たちは、1000個のドットのうち、被験者が「青」と判断したドットの数を減らして、「紫」よりのドットの数を増やし、もう一度同じ実験を行った。

すると、驚く事に被験者は、最初「紫」と判断していたドットを「青」とみなすようになったのである。

研究者はさらに、「青いドットを減らしています」と事前に口頭で伝えた上で同じ実験を行った。それでも被験者は、最初に「紫」と明言したものを「青」と判断してしまう傾向にあった。

画像はイメージです

研究者はこの実験を、より一般的な事象に適応。コンピューターで作り出した800種類の人間の顔を並べ、この人が「危険」か「安全」かを被験者に判断させた。そして同じように、「危険」な顔を減らして同じ実験を行うと、やはり被験者は判断基準を変化させ、最初は「安全」だと判断していた顔も「危険」とするようになった。

さらに、「倫理的」な事柄と「非倫理的」な事柄の判断についても、非倫理的なものを減らせば、人々は倫理的だと判断していたものを非倫理的とみなしてしまうということが明らかになった。

この奇妙な結果について、論文の著者達は以下のように述べている。

現代社会は目覚しい進歩を遂げていて、貧困・教育・暴力・乳児死亡率など様々な社会問題を解決しつつあります。それでも、多くの人が、世界はどんどん悪くなっていると判断しています。「実際には減っていることも、概念の中では増加している」という事実が、悲観主義の一つの原因なのかもしれません。

悲観的な気持ちになったときは、この「判断基準の不確実さ」について思い出すべきなのかもしれない。

参照元:ScienceIFLScienceTwitterYoutube

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yamada

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