【開発者インタビュー】アダルトVRの最前線とバーチャル・セックスの未来

テクノロジー

「なないちゃん」は電気羊の夢を見るか?

7月、アメリカ・ロサンゼルスで、サブカルチャーを主題とするコンベンション「アニメ・エキスポ2018」が開催された。

バンダイや東映アニメーションなど、大手のベンダーたちも参加する北米最大のアニメ・コンベンション。その一角に、ひときわ異彩を放つブースがあった。

大きな人だかりと歓声、その中心にはVRヘッドセットを装着し「ラブドール」とのバーチャル・セックスを楽しむ人の姿。

同人サークル「VRJCC」が制作した、VRアダルトゲームのデモである。

アダルト業界で流行の兆しを見せつつあるVR技術。

しかし、VRJCCのゲーム「なないちゃんとあそぼ!」および、その続編の「アンナちゃんとあそぼ!」は、従来のアダルトVRとは一線を画している。

ヒロインのVR映像を楽しめるだけでなく、スマートフォンをラブドールに取り付けることで、その振動をジャイロセンサーが読み取り、ヒロインの動きに反映する仕組みとなっている。

コントローラーやキーボードを使わずとも、プレイヤーのラブドールに対する動きに連動して、VR上の女の子が反応するという、まさにバーチャル・セックスである。

今回、VRJCCのプログラマー・ROBAさんに、この革新的なアダルトVR技術とその未来について、話を伺った。

VRとアダルトは相性がいい

── ROBAさんがアダルトVRをつくり始めたきっかけは、何ですか。

かなり初期からVRに注目し遊んでいて、そこで「近さ」こそがVRの醍醐味と思うようになりました。「近さ」と非常に相性が良いのがアダルトで、様々なアダルトVR作品を体験していましたが、その中で一番出来が良いものを現サークル代表に体験させたところ、金玉を万力で挟まれ、作ると言うまで締め続けると脅されたのがきっかけということになってます。
女の子を正常位、騎乗位で切り替えられるプロトタイプを最初に作って試してみたところ強烈なインパクトがあったので「俺、VRの歴史の教科書に載るかもしれない」と思い、これこそ自分のやるべきことと決めて作り続けています。

── アダルト業界に革命を起こす製品を開発されていると思うのですが、開発時に苦労すること、悩む事などはありますか。

これまでに無いものなので試行錯誤の連続で、開発中は常に新しい課題が出てはどう解決するか悩んでます。また、これは本業ではなく他に仕事がありますので、1作目を作るときは本業とVR開発で1日14時間、2ヶ月連続働き続けて体をおかしくしました。

2Dは老人のものになるのかも

── アニメ・エキスポでの海外の方の反応はどうでしたか。

実際に体験した人、またそれを見てた人たちには非常に好評でした。日本と異なりパフォーマンスを交えてとてもダイナミックにプレイされる方が多く、それを見た聴衆も盛り上がりました。
ただ、残念ながらネットでは賛否両論で、批判の方が多く感じます。

── 今後、VRはアダルト業界のスタンダードになっていくと思いますか。

テレビが生まれてもラジオが残っているように、現在の2Dのアダルトコンテンツは残りますが、一つのジャンルとしてVRは確立されると思います。DMMの発表では20代の若い人たちのアダルトVRの利用率が高いとのことですので、2Dは老人のものになるのかもしれません。

── アダルト以外の分野でも、VRは普及してくいと思いますか。

アダルト以外では、ゲームが非常に楽しいですし、実用的な用途でもかならず普及するものと思っています。

── バーチャルの魅力、リアルよりも優れている点は何でしょうか。

現実と異なる方向性で素晴らしい体験が出来ます。現実には存在しない場所で現実と異なる物理法則のスポーツをしたり、現実にはありえないような美人と性行為が出来たり、現実の自分とは異なる存在になったり出来ます。
現状のVRは現実をそのまま再現するには力不足ですが、代わりに夢のように楽しい非現実を作ることが出来ます。

よりリアルな体感を

── VRは、今後一大産業になっていくと言われていますが、現状そこまで普及しているようには見えません。どういった課題があるのでしょうか。また、課題を乗り越えるためにアダルトのパワーはやはり重要になってきますか。

現在のVRの課題は、①体験者が少ない②高い③面倒くさい、の3つです。
①と②は、見るだけではなく体験しないと良さがわからず、体験すれば欲しくなるのがVRなのに、1台のVRヘッドセットで一度に体験できるのは1人で、体験会をしても1日100人程度が限界で、しかもPC用VR一式は最低15万円かかり、実際に体験しないで購入するにはハードルが高いです。
この問題を解決するのは、一体型VRヘッドセット※だと思っています。低性能ですが、安価で、PCが要らないから簡単に持っていって多くの人に体験してもらえ、しかもかぶるだけで起動するので③も解決します。その際に一番説得力があるコンテンツがアダルトなのではないでしょうか。

※一体型VRヘッドセット:スマートフォンやPCなどの外部機器を必要とせず、単体でVR体験ができるヘッドセット。

── VRJCCは、今後どのようなアダルトコンテンツを作っていくのでしょうか。

現在の我々の作品は非常にシンプルな割り切った仕様になっていますので、よりリアルな体感を得られるアダルトVR作品を製作する予定です。また、女性向けも進行中です。

── アダルト分野において、VR以外に目をつけているテクノロジーはありますか。

最近はAR※技術を使ったアダルトに期待しています。ZED miniという現実とCGを自然に合成することが出来るカメラを購入したので、これで面白いものを作れるのではないかと考えています。

※AR:拡張現実。現実環境に情報を付加し、現実を拡張する。代表例がポケモンGO。

「技術の実験室」とも言われるアダルト業界。印刷技術は官能小説、フィルム技術はポルノビデオとともに発展していった。ネット配信技術も、カード決済における認証技術も、いのいちばんに取り入れてきたのがアダルト業界である。

最新テクノロジーとアダルトは、もはや切っても切れない関係。VR技術も、アダルトへの情熱とともに、今の我々には想像すら付かないような発展を遂げていくかもしれない。

取材協力:ROBAさん
参照元:VRJCCTwitter

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