【ゆるやかな殺人】サマータイムがアメリカで嫌われている理由

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ゆるやかな殺人?

日本が「サマータイム」の導入へ乗り出している。

現在与党内では、東京オリンピック開催に合わせ、2019年と2020年限定で、6~8月に時間を2時間早めるという案が取り沙汰されている。

「サマータイム」という言葉は「夏時間」の英語訳なのだが、アメリカでは同様の制度が「デイライト・セービング・タイム」と呼ばれている。

その名の通り、日の出が早い夏の期間、時間を少し早めることで、明るい時間を有効に使い照明を節約しようというのが目的である。

しかし一方で、起床のリズムがずれることによる健康被害についての懸念もある。心臓発作、睡眠障害、気分障害などとの関連性が疑われており、「ゆるやかな殺人」とまで言われている。

アメリカでは第二次世界大戦中よりデイライト・セービング・タイムが導入されていて、1966年以降に完全に定着したといわれている。

しかし、時計の設定をいちいち変更するわずらわしさに、上述の健康被害に関する研究データも相まり、アメリカ国民の間でも否定的な感情を持つ人が少なくない。

「veep」という人気コメディドラマでは、ジョナという議員のキャラクターが「デイライト・セービング・タイム廃止」を公約に掲げ、人々を沸かすシーンがある。

アメリカ在住のアンディ・ウッドラフさん(@awoodruff)は、有名な地図製作者(もはやアーティスト?)で、様々な社会問題と絡めて、直感的にわかりやすい美しい地図を多数作成している人である。

2015年には、デイライト・セービング・タイムに関する地図を作成し、話題になった。

アンディさんは、人の標準的な活動時間について、「7:00に起床し、18:00に仕事が終わる」と仮定し、1年365日のうち、「7:00より前に日の出」「18:00以降に日没」する日が何日あるのか、色分けされた地図を自身のブログに投稿した。

直感的に、暗い色のところは暗く、明るい色のところは明るい、と考えてもいいだろう。

まずは、デイライト・セービング・タイムを導入している、今のアメリカの現状。

起床する7:00の時点ではまだ暗く(左)、18:00の仕事終わりは明るい(右)という日が多いようだ。

そして、もしデイライト・セービング・タイムをやめればこうなるという地図がこちら。

起床時間は明るく(左)、仕事終わりはやや暗い(右)。確かに、こちらのほうが自然な状況という気がする。

ちなみに、もしデイライト・セービング・タイムを夏だけでなく1年ずっと続けたらどうなるか?

そりゃそうだ。起床時間は真っ暗で(左)、仕事終わりは明るい(右)という日が多くなる。

この地図が公開されるやいなや、「絶対、デイライト・セービング・タイムをやめるべき!」とのコメントが次々と寄せられる事態となった。

しかし実は、このブログポストのタイトルは「デイライト・セービング・タイムの愛すべきところとそうじゃないところ」というもの。作成したアンディさんは、批判するつもりで作ったのではなく、あくまで統計を出し、地図を作成することで、状況を可視化したのみである。

アンディさんはこの地図とともに、こんな風につづっている。

「朝は暗くていい、夜に明るいほうがいいという人にはサマータイムは最適だよ。逆に朝明るいほうがいい、という人は、ハワイに移住するのがいいんじゃない?」

許諾元:Andy Woodruff

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