日本は常連・イグノーベル賞
9月13日、ハーバード大学構内にある劇場・サンダースシアターにて、2018年度イグノーベル賞受賞式が開催された。
Soon this hall will he filled with #Ignobel and Nobel prize winners, and their adoring fans. pic.twitter.com/uPhbsd798p
— Improbable Research (@improbresearch) 2018年9月13日
ノーベル賞のパロディであるこの賞の受賞対象は、ユニークで創造性に富み、知的好奇心を刺激するような変り種の研究。しかし選考は本格的で、本家ノーベル賞受賞者も選考員として名を連ねている。
授賞式では、研究の代表者に60秒間スピーチする時間が与えられるが、そこでは「笑いをとること」が要求され、研究者からすればかなりハードルの高いステージとなっている。また、制限時間の60秒をオーバーすると、8歳の少女がやってきて「飽きたからやめろ」と罵られた挙句、強制退席させられるという辱めを受けるルールだ。
ちなみに、今年の授賞式のテーマは「ハート」で、受賞者にはハートをモチーフにしたトロフィーと賞金10兆「ジンバブエ・ドル」が送られた。
今回受賞したのは10チームだが、そのうち医療系の3チームのプレゼンが最高におもしろかったので、紹介したいと思う。
まずは「医学賞」。研究テーマは「ジェットコースターに乗って腎臓結石を出す」
司会者が研究タイトルを言った瞬間、会場は爆笑。
講演者は無言でディズニーランドのお土産と思しきグッズを演台に並べ、「とある患者が、春休みに家族とディズニーランドに行きビッグサンダーマウンテンに乗ったところ、2分後には腎臓結石が出てきた」というエピソードを語った。制限時間が過ぎ少女がやってきた際に、キャンディやディズニーランドのお土産を与えて「買収する」というユーモアも見せ、おおいに会場を沸かせるスピーチとなった。
続いて「再生医学賞」。研究テーマは「夜のペニスの状態を切手でモニタリングする」
3人のダンディな講演者たちが、まったくもって落ち着いたトーンで淡々と演説していく。「通常、男性が夢を見るとき、一晩に1~5回は勃起している」「しかし勃起不全の人はそうでない」「我々は切手を使って夜のペニスの状態をモニタリングする方法を開発した」
しかし、演説の合間合間に出てくる切手の絵柄が、エッフェル塔や噴火・噴水、ユニコーン、ロケットなど、明らかに狙っているとしか思えないチョイスである。
3人が開発したのは、寝る前に切手シートをペニスに巻きつけ、翌朝シートが破れているかどうかで、夜間勃起の有無を確認するテスト。およそ40年前の研究であり、今では勃起不全のテストとして一般的な方法となっている。「40年後の今、ハーバード大学で講演することができるなんて・・・」講演者はそう感慨深く語るも、背景に出ている切手の絵柄はキノコであった。
最後に紹介するのが、「医学教育賞」。受賞者は日本人医師・堀内朗さんである。研究テーマは「座ったままできる大腸検査」
自前の検査装置を持ち登壇した堀内さんは、「僕が開発した方法、見てくれる?」と、イスに座って「座位大腸検査」について指南を始めた。
「右手で操作して、左手を使って(スコープを)直腸に入れる」堀内さんがそう語ると会場は笑いの渦に包まれた。
制限時間が過ぎ少女が乱入しても、「笑っちゃうようなものかもしれないけど、この方法をみなさん、広めてください!」と笑顔で主張した堀内さん。とにかくその「ハート」が存分に伝わるプレゼンであった。
笑えるけど、実はすごく重要なことで、考えさせられる。そんな研究を掘り出して光を照らすイグノーベル賞。日本はこの賞の常連で、12年連続で誰かしらが受賞している。
イグノーベル賞の創設者・エイブラハムズ氏は次のように語ったそうだ。
多くの国が奇人・変人を蔑視するなかで、日本は誇りにする風潮がある