牛乳が人種差別に使われる時代
ドナルド・トランプ氏がアメリカの大統領に就任してから、オルタナ右翼の活動が活発化している。オルタナ右翼は右翼思想の一つで、白人至上主義や反ユダヤ主義、反フェミニズム主義と結びつくものであると言われている。
この活動はSNSや掲示板などのネット空間を通して広がっていて、オルタナ右翼の活動家たちは目を引くパフォーマンスや文言を次々に投稿しているのだが、最近のトレンドは遺伝学などの「学術的な研究」を根拠にそれらしい主張をすることなのだという。
例えば、今かなり話題になっているのが「乳糖不耐症」に関わる議論である。私たち日本人の中には「乳製品を摂取すると具合が悪くなる」という人が割とたくさん存在する。これは遺伝子が原因であり、乳製品に含まれる乳糖を上手く消化できないことによって起こる。この「乳糖不耐症」は、遺伝学的研究により「有色人種に多く発生し、白人にはほぼ起こらない」ことが報告されている。
この研究結果を利用し、「白人は牛乳が飲める→白人は有色人種より上」という無茶苦茶な理論を導き出す白人至上主義者たちが現れ、なぜか上半身裸で牛乳を一気飲みするというパフォーマンスを行っているのだ。
白人至上主義者たちはパフォーマンス動画と一緒に「牛乳が飲めないならアメリカから出て行け」といったコメントを投稿し、アメリカに住む有色人種たちを煽っている。
ちなみに上の動画はアメリカのニュース番組「ザ・ヤング・タークス」が紹介したもの。番組内では、黒人のコメンテーターがこの動画を鼻で笑い飛ばしている。くだらなすぎて怒る気にも反論する気にもなれないといった感じだ。
実は、こういった活動に対して一番怒りを覚えているのは遺伝学の研究者達であるという。
アメリカ人類遺伝学学会は先日、「人種差別と遺伝学を結びつける試みを非難する」という声明文を発表。声明内では「これからも最先端の遺伝子研究を支え、科学的な知識を更新し、人種差別を促進させるような『遺伝子にまつわる議論』をクリアにしていきたい」と今後の遺伝学の課題について語られている。