オンラインで気軽に死刑宣告
日本における死刑制度では法務大臣の決定により死刑が決まるが、判決から執行まで長い時間がかかることはみなさんもご存知だろう。
一方、同様にロックダウンの最中にあるシンガポールでは、Zoomを使用した裁判が行われ、死刑判決が下された。
今年5月に死刑が決まったのは、ドラッグ関連の罪で捕まった37歳のマレーシア人。
その男は2011年に、2名の運び屋を雇ってヘロインを運んでいた他、人身売買にも加担していたことで逮捕されていた。
シンガポール最高裁の担当者によると、男に関する訴訟は「裁判に関わる全ての人の安全のため、オンラインで行なった」と語った。シンガポールは外国人労働者の間で感染拡大が続いていることから、4月21日からロックダウンに入っている。そのため、5月中旬、Zoomを使用した裁判を行なったという。
弁護士であるピーター・フェルナンド氏は、「Zoomを使用した被告への判決言い渡しには反対していなかった」と述べている。これは裁判官の評決を聞くだけであり、他の方法はなかったためとしている。
これに対し、死刑に反対する人権の専門家は、「評決をリモートで決定するのは冷淡」であるとし、「シンガポールが事件をZoomで終結させようとしている部分に深刻な懸念がある」と厳しく見ている。
また、Zoomを使用した死刑宣告が行われたのはシンガポールだけではなく、ナイジェリアでも起こっており、この件も人権団体に批判されている。
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2018年のシンガポールの死刑執行数は13人。2019年は4件と大きく減少はしているのだが、今回のようにオンラインで死刑判決を言い渡すあたり、国際的な基準とは距離のあるものだ。
また、Zoomには数々の脆弱性も報告されており、不審者による会議への乱入や、4月にはアカウント50万件がダークウェブに流出するという事件も起こっている。
公的機関がこうした安全性の低いソフトを採用していることにも、ネット上では心配の声が上がっている。
参照元:The guardian、Facebook