犯罪組織で元国防大臣が活動
10月17日に米紙「Financial Times」が公開した記事によると、ロサンゼルス空港にて、メキシコの麻薬カルテルの幹部が逮捕された。
ところが捜査によると、その男はメキシコの元防衛大臣本人だったことが明らかになった。
逮捕されたのは、サルバドール・シエンフエゴス(72)。2012年から18年までメキシコの国防大臣を務めていたが、今年に入り汚職の疑いですでに捜査が始まっていた。
ニューヨークのアメリカ連邦裁判所に提出された起訴状によると、シエンフエゴスはすでに麻薬の密輸と流通、マネーロンダリングなどの罪に問われている。
また検察は、「彼は賄賂を受け取り、メキシコの麻薬カルテルである”H-2カルテル”を支援するために彼は公の立場を利用した」と主張。これにより、カルテルは数千キロもの麻薬をアメリカに送り込んだことが判明している。
事件に関し、メキシコのロペス・オブラドール大統領は「嘆かわしく、前例がない事態」であると述べたが、シエンフエゴスによって任命された軍事参謀長の横に立ち、「腐敗はない」と話したという。
シエンフエゴスは、国防大臣の任期中、新しい州兵警察を設立したり、メキシコ空港のインフラ整備などを精力的に行ってきた。また、前政権を「退廃的」と呼び、着任後には前国防大臣の逮捕にとりかかるなど、汚職には特に批判的な姿勢をとっていた。
そういうこともあり、国防省はメキシコ政府の中でもクリーンなイメージがあったのだが、今回の事件は政府の大きな汚点となるだろうと考えられている。
また、昨年にもアメリカでメキシコの元司法長官も逮捕されており、現在刑務所に収監され裁判を待っている。
アメリカのシンクタンク「ウィスソン・センター」のメキシコ研究の責任者、ダンカン・ウッド氏は「これは、オブラドール大統領のような人にとって、現実的なジレンマを引き起こします。彼は誰を信用できるのか、誰が潔白なのかわかっているのでしょうか。彼はそうではないと思います。」と明かしていた。
メキシコの麻薬犯罪は深刻さを増しており、その魔の手は政府にまで及んでいる。