亡き母親に変装して年金を不正受給
近年、イタリアでは年金詐欺が横行しており、毎年数十人が死亡した人物になりすまして年金を騙し取るなどの容疑で逮捕されている。そんななか、元看護師の男（57）は亡き母親の年金の受給継続のために信じがたい手段に出たという。
男は母親の死亡届を出さずに年金を不正に受給していたというが、11月上旬、年金受給継続のために期限の切れた身分証明書の更新をする必要があった。イタリアでは期限切れの公的書類は本人自らが直接更新する必要があるため、男は老女に変装し、事務所に赴く以外に選択肢がなかったようだ。
監視カメラの映像には男が車で事務所ヘ向かい、女性用の服を着てビルへ向かう様子が映っている。ウィッグをかぶり、化粧やマニキュア、そして宝石を身に着けていたにもかかわらず、役所の職員の目には明らかに浮いて見えたようだ。イタリアメディアによれば、職員がまず不審に思ったのは首の後ろや手、そしてあごに生えていた黒い体毛だったという。何かがおかしい、そう思った職員が当局に通報したところ、老女の正体が男であることが暴かれたのである。
3年間にわたり遺体を自宅に安置
捜査当局は、男の母親であるグラツィエラ・ダッロリオが約3年前に82歳で自然死したとみている。それにもかかわらず、男は母親の死亡届を提出せず、代わりに遺体を自宅に安置したまま、3年間にわたり母親になりすまして年金の受給を続けていた。
ボルゴ・ヴィルジリオにある男の自宅を捜索した警察は、小さなクローゼットの中から二つの寝袋に包まれた母親のミイラ化した遺体を発見した。男は元看護師としての経験を生かし、遺体の腐敗を防ぐため血液や体液を抜き取ったとみられている。母親の年金受給と3軒の家族所有住宅からの収入を合わせて、年間53,000ユーロ（約461万4500円）の収入を得ていたと推定されているこの男は、現在、年金詐欺や死体遺棄などの罪で起訴されているとのことだ。
