図書館で70年眠っていた小さな「紙切れ」、実は1700年前の『オデュッセイア』だった!

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先週、映画館で『オデュッセイア』を観てきた。もちろん、IMAXレーザーGTの劇場で、である。

ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』を巨匠クリストファー・ノーラン監督が映画化した作品なのだが、なにしろ原作が書かれたのは今から2800年ほど前。そんな昔の物語を2026年になって巨大なスクリーンで観ているというのも、考えてみればなかなか不思議な話である。

そんなことを思っていたら、オランダからタイムリーなニュースが飛び込んできた。大学図書館で何十年も保管されていた、手のひらにも満たない古びた羊皮紙。調べてみたところ、なんと約1700年前に書かれた『オデュッセイア』の一部だったというのだ。

わずか6.6×7.7センチの羊皮紙

発見されたのは、オランダのユトレヒト大学図書館。問題の羊皮紙はわずか6.6×7.7センチほどで、変色して水染みもあり、見た目は正直なところ「ずいぶん古そうな紙切れ」である。今回発見された『オデュッセイア』の羊皮紙断片。わずか6.6×7.7cmほどだという

大学が20世紀半ばに購入した古代文書のコレクションに含まれていたもので、長い間、7世紀ごろの文書の断片だと考えられていた。ところが2024年、古代文書を調べていた研究者マルク・デ・クレイ氏が、そこに書かれているギリシャ文字を読んでいて気づいた。

これ、ホメロスじゃないか?

詳しく調査してみると大当たり。しかも年代は考えられていたよりさらに古く、西暦300年ごろに作られたものだったのである。

書かれていたのはあの、「牛を食べちゃった場面」

では、小さな羊皮紙には何が書かれていたのか。『オデュッセイア』第12歌、オデュッセウス一行が太陽神ヘリオスの島へたどり着いたあたりの文章だった。

島にはヘリオスが大切にしている神聖な牛がいる。オデュッセウスは仲間たちに「絶対に食べるなよ」と警告していたのだが、食料がなくなり腹を空かせた仲間たちは、とうとう牛を殺して食べてしまう。当然、神様は激怒。

このあとオデュッセウス一行は大変な目に遭うことになるのだが、今回発見された羊皮紙には、まさにヘリオスが「俺の牛、食っただろ!」と知るあたりが書かれていたのである。2800年も読み継がれている物語だというのに、やっていることは「食べるなと言われたものを食べて怒られる」。妙に人間臭い。

1700年前の「文庫本」だった?

さらに面白いのが、この羊皮紙がもともとどんな本だったのかということ。研究者によると、西暦300年ごろのエジプトで作られた小型の『オデュッセイア』の一部だった可能性が高いという。

その本の大きさは、現代のKindleくらいだったと考えられている。古代ギリシャ・ローマの本というと、巨大な巻物を「バサーッ」と広げて読む姿を想像してしまうが、1700年前にも持ち歩けるサイズの本があったわけだ。

電車の中で文庫本を読むような感覚……だったかどうかは知らないが、少なくとも「小さい本を持って出かける」という発想は、今とあまり変わらなかったのかもしれない。

そして1700年後、私は映画館で観ていた

そもそも『オデュッセイア』が成立したのは紀元前8~7世紀ごろとされている。つまり、この羊皮紙が作られた西暦300年ごろの人から見ても、『オデュッセイア』はすでに1000年近く昔の古典だったのだ。

そして、それからさらに1700年。2026年には映画となり、私は先週、東京・池袋の映画館でポップコーンを食べながらオデュッセウスの旅を観ていた。

古代エジプトのどこかで小さな本を開いていた人がいて、1700年後の東京ではスクリーンを見上げている人間がいる。羊皮紙から本へ、本から映画へ。媒体はとんでもなく変わったが、2800年前に作られた物語をいまだに人間が楽しんでいる。

そう考えると、ホメロスという人、やっぱりとんでもないヒットメーカーだったのである。

参照元:
Utrecht University【1】
DUB / Utrecht University【2】
NOS【3】
Youtube【4】

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ひろしげ

海外渡航経験はハワイ、イギリス、ニュージーランド。大陸に憧れと恐れを抱く典型的島国の人です。趣味は大仏巡り。牛久大仏を擁する茨城県が魅力度ランキング最下位というのは納得できない。

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