英国ウェールズの山あいに残る、中世の不思議な物語。そこには、4世紀のローマ皇帝マグヌス・マクシムスがフレニ・ファウルの丘に軍を置いたと記されている。長らく伝説と考えられてきたその場所の近くで、実際にローマ軍の要塞跡が見つかった。
しかも新たな発掘で、4世紀後半のローマ貨幣2枚が出土したという。物語の主人公と時代が重なる可能性が浮かび上がった。ただし、皇帝本人がここに滞在した証拠が得られたわけではない。
衛星画像に現れた、見慣れない四角形
調査を進めているのはローマ史研究者マーク・メロニー氏。2024年、ウェールズ南西部ペンブルックシャーの衛星画像に残る地形の輪郭に注目し、現地でローマ時代の瓦などを確認した。
要塞は約180メートル×150メートルで、角が丸くなった長方形というローマ軍の典型的な形をしている。研究者は約500人の兵士を収容できたと推定する。地中探査では司令部や指揮官の住居とみられる建物の配置も示された。
Big news about would be Roman emperor, Magnus Maximus, confirming details of later Welsh literature – re his presence in Pembrokeshire.
He became a crucial figure in the medieval Welsh imagination, as last a bastion of Roman civilisation vs the barbarians.
https://t.co/2BQMSdVHAd— Philip Anderson (@P_G_Anderson) October 12, 2026
貨幣2枚が、伝説の時代に近づけた
新たな調査では、ローマ時代の土器や建築用の瓦、鉄製の筆記具、床面、車輪の轍なども確認された。そして注目を集めたのが、4世紀後半に年代づけられる2枚の貨幣である。
この地域に伝わる『マビノギオン』の一編「マクセン・ウレディグの夢」には、ローマ皇帝マグヌス・マクシムスがフレニ・ファウル付近に陣を構えたという話が登場する。マクシムスは383年にブリテンの軍隊から皇帝に推戴され、388年に敗れて死亡した実在の人物だ。
伝説は史実だったのか
要塞はフレニ・ファウルの頂上から南西へ約3.5キロの地点にある。地理的な一致と4世紀後半の遺物は興味深いが、貨幣だけでは当時ここにどのくらい長く軍が駐留したかも分からない。伝説が記録されたのは出来事から何世紀も後のことで、同じ要塞を指していると断定するのは早い。
それでも、物語の舞台とされる土地に、確かにローマ軍の拠点が存在した意義は大きい。長く口伝えされてきた物語は、どこまで歴史の記憶を留めているのだろう。小さな貨幣2枚が、壮大な問いを投げかけている。








