世界で最も災害の多い国、日本。かつて我々の先祖たちは、災害の恐ろしさを地名に託し、後世に伝えようとしていた。
地名にあると危険な注意すべき漢字9選!
以前、難解な駅名について紹介したが、同様に地名にも難解なものが多い。難解だけならまだしも、地名には様々な先人の思いが託されていたりもするのだ。
今回は、地名に入っていると危険と言われる漢字9つを紹介しよう。
1、龍・竜(リュウ)
水神の龍がのたうちまわるような、激しい豪雨や津波など多様な災害に襲われやすい場所を意味する。
由来を聞くと、文字通り激しい災害が起きたことを思わずにはいられない地名である。
代表例は福井県の九頭竜(くずりゅう)川。九つの頭を持つ竜が暴れたように見えたのだろうか、、
2、鮎(アユ)
「揺く(あゆく)」に由来する。軟弱な地盤の土地を意味しており、平地では地震災害が発生しやすい。
代表例は鮎川。昭和56年8月23日に土石流災害が起こっている。
3、蛇(ジャ)
蛇崩や蛇抜は土砂が流れていく様を示す。
長野、岐阜、富山、長崎など各地にあり、水害の歴史と深く結びついている。わが国において蛇は、昔から「天から水を運ぶ神の使い」の象徴とされている。
2014年の8月に広島で起こった土砂災害で最も大きな被害を出した「八木」は元々「八木蛇落地悪谷」と呼ばれていた。
4、女(オナ)
荒々しい波を意味する「男浪」に由来する。過去に津波の被害を受けた土地である恐れがある。
代表例は女川や小名浜。宮城県牡鹿郡女川町では東日本大震災により被害を受けている。
5、亀(カメ)
水などが土や岩をえぐる意味の「嚙マ(カマ)」に由来する。侵食されて陥没している地形を意味する。
のんびりとした生き物のカメを想像しがちだが、過去にはそのイメージと相反する災害が起こっていた可能性がある。
代表例は亀有、亀戸。荒川と隅田川に囲まれた亀戸は、海抜が低い地域であり、水害の危険性が非常に高い地域といわれている。
6、駒(コマ)
「転(コロ)」と「間」を組み合わせた用語。輪状に川に囲まれた土地で、洪水発生地帯を意味する。
代表例は駒込、駒場。駒込(東京都豊島区)は、地盤の弱い谷底低地であり地盤が弱い。
7、椿(ツバキ)
「刈り取る」という意味の「戯ゆ(つば)」に由来する。土地が侵食された崖地や崩壊地形を意味する。
こちらの地名は、美しい花をイメージしてしまうが由来となっている言葉は恐ろしすぎる。
8、梅(ウメ)
「埋」に由来する。土砂崩れにより砂が堆積した土地の可能性あり。人工的な埋立地の意味もある。
大阪の梅田がよく代表される。江戸時代に湿地を埋めたてて田畑としたことから埋田という地名から由来する。埋立地の地盤は、決して良いものではないというのが通説である。
9、柿
「掻く」や「欠く」に由来する。崩れやすい崖や決壊堤防による氾濫常襲地・津波常襲地を意味する。
先人からの警告の風化
日本には、長い歴史の中で、何度も自然災害に遭っている土地が存在する。
そういった場所には先人が災害を示唆する地名をつけていることが多いのである。つまり地名を知れば、災害を予見することもできるのだ。
「聞こえの悪い地名は変えてしまえ!」
しかし、最近では新興住宅の開発が進み上記で紹介したような危ない地名を隠そうとする動きが全国で散見されている。
「~が丘」や「~台」、もしくは「希望」や「光」のような不自然に明るい単語を使った地名は、古い地名ではない可能性が高いので要注意だ。
実は、新地名が一つ誕生すると、少なくとも数個の旧地名が抹消されることは往々にして起こっている。そうなるとその土地に根付く伝承、それこそ災害の歴史も人々から忘れ去られていく結果になっているのである。
旧地名の調べ方
主な調べ方の二つがこれだ。
・区役所、市町村役場で調べる。
・図書館や資料室で旧地名の由来を調べる。
この他にも、インターネット上では様々な検索サービスが存在するのでそちらを利用するのもいいだろう。実際その地に赴き、古くから住む人に聞くことも有効かもしれない。
意識をしていれば、危険な地域に住むことを避けるのは難しくなさそうだ。
しかし、逆に安全な場所を見つけるにはどうすれば良いのだろうか?
安全な地域とは?
東日本大震災の津波の際、古い神社ほど津波被害を受けていないという。それらの神社は、1000年以上前の津波被害を生き抜いた、もしくは受けない場所へと移転されたものであった。
おそらく日本は幾度となく震災を経験してきた。その度、復興する際に安全な場所を見極め神社を建立していると考えられる。こうして長い間、無言ながらも先人から我々に、警告は発せられていたのである。
安全な地域を見極める際、古くから存在する神社が目安になることはもちろんのこと、そのもっと昔から存在する古墳の有無なども重要になるという。
こういった歴史は、人類そして地球が蓄積してきた記憶といっても過言ではないだろう。しかし我々はこういった記憶に関心を寄せることなく、業者が声高に謳う売り文句に耳を傾ける節があるのではないだろうか。
地名の由来に関心を持ち、調べることは、地域の歴史、過去の災害に向き合い、災害対策の優先順位を考える大きなヒントになるだろう。
こうした行動が自分の身だけでなく、家族の命を守る結果に繋がるのかもしれない。
参照元:『この地名が危ない 大地震・大津波があなたの町を襲う』(楠原祐介著)、災害写真データベース、pinterest