メキシコやブラジルといった南米の国々では、ギャングによる事件が多数起こっている。
殺人、ドラッグ、売春といった罪を次々と犯す、非常に恐ろしい存在であることは間違いない。
だが、時折彼らも良心を垣間見せることもあるようだ。
強きを挫き弱きを助く
ブラジル・リオデジャネイロで名をとどろかせているギャング、トーマス・ビエラ・ゴメスという若い男が、2名の男性看護師を誘拐した。
だが暴行目的ではない。なんと、貧困層の人々のもとに連れて行き、黄熱病ワクチンを注射させたのである。
南半球に位置するブラジルは現在雨季に差し掛かっており、黄熱という感染症にかかる人々が増加している。
この病気は蚊を媒介にしており、発熱や嘔吐と言った症状を引き起こす。ブラジル国内だけでも、既に数十人の死亡が確認されているという。
行政が提供する予防接種は広まっているというが、貧しい人々の存在は無視されており、ほとんどがワクチンを打てずにいる。
増加する黄熱患者の中、ギャングが立ち上がる
リオデジャネイロで最も貧しい地域にあたるサルゲイーロという街には、トーマスのドラッグ取引の拠点があった。
貧しい人々が黄熱で苦しんでいる姿を見て、彼と仲間たちは国営診療所を襲撃。
中にあったワクチンや注射器を根こそぎ盗み、更に2名の看護師を車で誘拐したのだという。そして、地元の人々を近所にあるバーに集め、ワクチン投与を開始したのだ。
数時間にわたる作業が終了すると、看護師は無事に帰されたらしい。診療所の報告書によると、トーマスは犯行動機をこのように話していたという。
サルゲイーロの住民が予防接種センターでワクチン接種を拒否されつづけていたから、犯罪行為をしたまでだ。
この事件に関して、リオデジャネイロ警察は事件の報告を受けていないという。つまり、診療所の看護師たちは通報をしなかったのだ。
ブラジルのSNS界隈ではトーマスの行いに称賛が集まっており、また、ブラジルの前環境大臣もツイッターにて彼を讃えるコメントをしている。
とはいえ、彼の行ってきた悪行の数々は拭い去ることはできない。警察は、現在も彼の行方を追っている。