ゲーム脳を突き詰めれば・・・
ちょっとリアルでバイオレンスなゲームが世に出たばかりの頃、世の大人が「現実とゲームの区別がつかなくなるから止めさせろ!」と躍起になっていたのを覚えているだろうか。
この記事をお読みの若い人々のなかには「んなわけねぇだろ!」と当時総ツッコミした人もいるだろう。だがこの度、それをカッコよすぎる形で実現してしまった兵士が現れてしまったのだ!!
“ゲーマーなんて弱っちぃオタク”だなんて思っているそこのあなた!彼の勇姿を見れば、世界を守るのに理由なんていらねぇ!と思うに違いない!!
彼の名前は、ジョン・ドゥッテンホーファー。アメリカ・コロラド州出身の24歳だ。
彼は兵士になる前はソフトウェア開発会社にいたというが2017年の4月に仕事を辞め、シリアの都市・ラッカを拠点にするクルド人民防衛隊に入隊した。
そのきっかけとなったのが、「コール・オブ・デューティ」という名前の戦争ゲームだったのだ。
The final weekend of The Resistance community event is here. Clear your calendar, hunt all the props, and complete your final Resistance Collections before Feb. 27! #CODWWII pic.twitter.com/Zc2S4tZrV7
— Call of Duty (@CallofDuty) 2018年2月23日
コール・オブ・デューティとは、アメリカのゲーム会社「アクティヴィジョン」が制作・販売をしている一人称視点シューティングゲームである。実際の戦場を模して作られており、そのリアルさから世界中の多くのプレイヤーに愛されている。
ドゥッテンホファー氏は兵士になる前は、このゲームを毎日13時間もプレイしており、戦略から武器の使用方法まで様々なことを理解したのだという。
彼は戦場に行った理由をこのように語っている。
死ぬのは全然怖くなかった。戦場でどう攻めるか、どうしたら殺されず済むか、全部ゲームでシュミレーションして準備できたから。
小さいころから13時間ゲームをしていたけど、座っているだけで時間を浪費しているだけだな思ったんだよ。それを続けていて、戦場にいきたいなら行けばいいんじゃないかと考えたんだ。
もちろん、戦場で使う銃は本物であると早々に気づかされたのだそう。それでも彼は逃げ帰ることなく、一年弱たった今でもシリアで戦い続けている。
シリア渡航への道
ここまでだとゲーマーが軽い気持ちで志願したように見えるが、素人から兵士になるまでの道は果てしないものだったという。
シリアへの渡航費用約73万円(7000ドル)を工面するために副業もはじめ、防弾チョッキなどの装備なども自前でそろえた他、渡航してからも数週間にわたるトレーニングに励んだのである。
現在ではスナイパーのチームに所属し、ISISとの激しい戦闘を繰り返している。ゲームの影響もあってか、かなりの戦果を挙げているとのことである。
近々アメリカへ帰ると決めている
Sitting victorious from a former fighting position. #223 #ypg #raqqa #fuckisis
だが、順風満帆のように聞こえる彼の兵士としての日々はもう終わろうとしている。2018年現在、シリアからはISISはほぼ撤退しており、彼の役目はなくなりつつあるからだ。
また彼が帰国の決め手となったのが、仲間の死だった。
昨年の10月、シリアで共に戦っていた同い年の親友を爆弾で亡くしており、深く彼の心を傷つけたのだ。これは、ゲームでは決して体験することのない喪失感だっただろう。
この時の心情について、ドゥッテンホファー氏はこのように地元メディアに語っている。
戦場で兵士になったが、行く前と行った後でも自分が変わったとは思えない。でもとても貴重な体験ができたから、本当に賢明なアイデアだったと思う。
この過酷な経験によって、日常のすべてのものに感謝し、幸せに暮らせるようになった。アメリカに帰ったら、アイスをたべて、タバコを吸って、友達とたくさん酒を飲みたいと思う。
なにも変わっていないと称しているが、彼自身はきっと大きく成長したに違いない。シリアでの任務を終えた日に、彼が無事にアメリカへ帰ってくることを祈るばかりである。