凶器を持った男を愛を持って窘める警察官
不寛容さが世の中を包む昨今、人の間違いを愛を持って受け止められる余裕のある人は少ないのではないだろうか。
だが、今回紹介するこちらの警官の包容力・・・そして強さはただものじゃなかった。
2017年6月、タイ・バンコクのとある警察署に、自身の首にナイフを突きつけた男が入ってきた。自暴自棄になって自殺しようとしていたその男、しかし、そこに現れた警察官は暴力で押さえつけようとはしなかった。
なんと、両手を広げて抱きしめようとしたのである。
事件が起こったのは昨年6月17日。バンコク中部にある警察署に、男がナイフを持って入ってきた。
非常に恐ろしい場面に遭遇しており、普通なら警察官は力をつかって取り押さえるはず。
・・・しかし、そこに居合わせたアニルット・マレー巡査部長は、まるで友人と喋るように机にもたれかけ、彼との対話に臨んだのである。
何もしないからナイフを出しなさい、と優しく訴えかけると、細身の男はおどおどとしながら差しだした。
その後、マレー巡査部長は大きく両手を広げ、彼を腕の中に受け入れたのだ。
熱い抱擁を交わすと、彼は途端に泣き崩れ、何度も何度も謝り、胸中を巡査部長にあかし始めたのであった。
彼はミュージシャンでしたが、食い扶持を作るためにやった3日分の警備の仕事の給料を払ってもらえずにいたのです。
その上、愛用していたギターを盗まれてしまい、彼のストレスが頂点に達してしまったんです。
私は彼の話を聞いていくごとにシンパシーを感じ、私のギターをプレゼントし、一緒に食事に行って話を聞いてあげようと思いました。
マレー巡査部長は、タイの地元メディアに対してこのように語っている。
今回乗り込んできた男は罪に問われず、心のケアのために病院を受診しているとのことだ。
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マレー巡査部長の判断は、ある種の危険な賭けといっても過言ではなかった。自暴自棄になってやってきたであろう男性をなだめるのは並大抵の人間ができることではない。
しかし、押し入ってきた時の様子を見て、男性の心の悲鳴をどこか感じ取ったのであろう。真に心が強い人間にしかできないことだ。
我々も、周りに苦しんでいる人がいたら、少しでも耳を傾けてあげたいものである。