アドルフ・ヒトラー。おそらく、「独裁者」と言われて一番最初に思い浮かぶのが彼の名前ではないだろうか。
1945年4月、ドイツの敗戦とともに自宅の地下で自殺したとされるが、その死に関しては「陰謀論」が尽きない。
「敗戦後も南米に逃げ延び長寿を全うした」という説が有力であるが、中にはナチスの隠された技術によって「南極や月の裏側で新生活を始めた」などという型破りな説も存在する。
そんな中、ヒトラーの死に関する「ある研究論文」が物議をかもしている。
ヒトラーの死亡時期を巡る論争
今月、フランスの法医学・人類学者フィリップ・シャルリエ博士率いる研究チームが、ヒトラーの死亡時期を決定付ける論文を発表した。
#Hitler est bien mort en 1945 à Berlin, et ses restes sont à Moscou. Notre étude biomédicale définitive est à lire ici : https://t.co/cz0DDCDgK8 pic.twitter.com/Fjd1UiEdoq
— Philippe Charlier (@doctroptard) 2018年5月18日
この研究は、ロシアに保管されていた「ヒトラーの遺骨」を調査したもの。頭蓋骨と歯の調査により、「ヒトラーは確実に1945年に死亡した」ことがわかったという。
また、頭蓋骨に銃弾が通過したと思われる穴があり、歯には青酸カリを使用した形跡が残っていたため、自殺の方法は、「拳銃と毒物の両方であった」と考察されている。
科学的手法により導き出された結論。これにより、ヒトラーの死に関する陰謀論の全てに終止符が打たれた・・・かに思われた。
しかし、議論はここで終わらないのである。
陰謀論者達の猛反撃
「ヒトラーが敗戦後、逃亡に成功した」─この説を支持するピーター・デビッド・オア氏。彼は、自身のFacebookアカウント「Eyewitnesstohitlersescape(ヒトラー逃亡の目撃者)」で、シャルリエ博士の論文を痛烈に批判した。
確かに、この頭蓋骨と歯の持ち主の死亡時期は1945年かもしれない。しかし、そもそもこの遺骨がヒトラーであるという証拠はどこにもない。ちなみに、2009年に、この骨の断片のDNA鑑定が行われ、「実は女性のものであった」ということが判明している。それを知らないのか?
実は、「ロシアに保管されているヒトラーの遺骨(とされているもの)は、DNA鑑定の結果女性のものだった」というウワサは、まことしやかにささやかれていた事である。
これを機に、シャルリエ博士のTwitterは陰謀論者によって攻撃される事になる。
シャルリエ博士も激おこ
陰謀論者の猛攻に対し、シャルリエ博士もTwitterで反論している。
DNA tests? Show me the publication! Show me the Russian authorization for the sampling! No publication = no science
— Philippe Charlier (@doctroptard) 2018年5月22日
DNA鑑定?論文を見せてみろ!サンプル鑑定をロシアが許可した証拠を見せてみろ!論文として発表されていないのなら、科学的な事実ではない。
A scientific trusts facts, no rumors.
— Philippe Charlier (@doctroptard) 2018年5月22日
信用できる科学的な事実だけを知りたい。ウワサはいらない。
From an anthropological point of view: no one argument for a female skull. NO ONE.
— Philippe Charlier (@doctroptard) 2018年5月22日
人類学の観点から言えば、誰も「女性の遺骨」説を支持していない。だ・れ・も。
We have scientifically proven that: 1. the teeth/prosthesis are Hitler’s one. 2. from a macroscopic anthropological/forensic point of view, nothing can exclude the fact that the skull fragment may be Hitler’s. Point.
— Philippe Charlier (@doctroptard) 2018年5月22日
我々は以下のことを科学的に証明した。
1. 歯と義歯はヒトラーのものである。
2. 法医学と人類学の観点から、頭蓋骨がヒトラーのものだという事実を否定することはできない。
・・・かなりの激おこっぷりである。
果たしてヒトラーの死の真相やいかに。
驚異的な扇動性を持っていた彼は、死して尚も人々の心に取り憑いて離れないのである。