時間に依存する生物の機能
地球の環境は、太陽や月の位置によって周期的に変化する。昼と夜は繰り返され、季節はめぐり、月の引力が海の満ち干きを発生させる。
このような現象は、我々に「時間」という概念をもたらし、一日・一月・一年という単位が作り出された。
「時間」は、地球に住む生物たちの機能に大きな影響を与えている。ヒトが夜に自然と眠くなることもそうだし、また、ある種のサンゴは、必ず満月の日に産卵することが知られている。月経周期も月の満ち欠けと関わっているといわれているが、こちらは俗説である。
このような、「時間」と生物との関係について研究する学問を、時間生物学(クロノバイオロジー)という。
今年6月、時間生物学を取り扱う学術雑誌「クロノバイオロジー・インターナショナル」にて、「ヒトの精子のクオリティ」にも時間が関わっているとの研究結果が発表された。
精子のクオリティが一番高い時間は?
スイス・チューリッヒ大学の研究チームは、「ヒトは、早朝(朝7:30よりも前)に、『精子の濃度』『精子の量』『正常な形の精子のパーセンテージ』が著しく高い傾向がある」ということを明らかにした。
また、季節としては、「精子の濃度」「精子の量」において、春が最も高く、夏に最も低くなるという。
「精子の運動性」については、少し複雑な結果が得られている。
「ノーマルな精子をもつ男性」の場合、時間には依存しないが、一方で、「アブノーマルな精子をもつ男性」の場合、午前8:30~10:00までの間が最も「精子の運動性」が高いという。
また、ノーマル・アブノーマルに関係なく、「精子の運動性」は季節に依存しない。
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これは、チューリッヒ大学附属病院にて、7,086人の男性から、12,245の精子サンプルを集め、調査した結果である。
しかし、論文の著者らは、この研究の問題点について以下のように書いている。
我々のデータは、病院の受付時間である朝~夕方の12時間に射精された精子だけを測定したものです。セックスが最も多く行われている夜間の時間帯についてのデータが不足しています。
他にも、一つの地域(チューリッヒ)に偏った結果であり、普遍的な事象といえないことや、男性のライフスタイル(肥満や喫煙など、男性不妊を起こす可能性のある要因)については加味していないことなどを挙げている。
著者らは、今後、精子と時間周期との関係について、分子的に解明していきたい、とのことである。
参照元:IFLScience