同性愛の科学
衆院議員の杉田水脈(みお)氏が「LGBTに対して差別的である」として、物議をかもしている。
杉田氏は、「新潮45」に寄稿した文章にて、「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」との自論を展開。批判が相次いでいる。
自民党の杉田水脈(みお)衆院議員(比例中国ブロック)が月刊誌への寄稿で、同性カップルを念頭に「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」などと主張した問題。与野党から批判が相次いでいます。https://t.co/GAi3n2NrXV pic.twitter.com/QNmbtCSNF3
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) 2018年7月25日
LGBT(最近はLGBTQ)は、レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー(・クエスチョニング)の略であり、異性を愛することができる人も含まれているので、全員が子供を作らないとは限らない。妊娠や出産が難しい状況でも、体外受精や代理母などにより、技術的には子供を作ることが可能である。
生物学的な観点では、同性愛が「進化論のパラドックス」と言われてきたのは事実である。子孫を残すことは難しいが、「同性愛の遺伝子」は消滅することなく、どの時代にも存在し続けている。
「同性愛はなぜ存在するのか」──この答えを見つけ出すため、生物学者達は様々な実験・研究を重ねている。
2015年には、スコットランドの研究チームが行った、「ショウジョウバエ」の実験が話題となった。
ショウジョウバエのメス(左)とオス(右)
この実験では、まずショウジョウバエのオスを、「同性愛的な要素が強いグループ」と「同性愛的な要素が低いグループ」に分ける。
そして、それぞれのグループにメスを加えて繁殖させ、生まれた子孫を比較する。すると、前者のグループの子孫には、「繁殖力の強いメス」が多かったという。
つまり、「同性愛者のオス」が存在するグループのほうが、「より繁殖力の強いメス」が産みだされるという、不思議な結果である。
研究チームによると、「このような結果になった理由を説明するためには、まだまだ追加の実験が必要である」とのこと。
この実験結果は、「同性愛の遺伝子」が、人口を維持するために重要な役割を果たしている可能性を示唆しているとして、サイエンスメディアを中心に広く報道された。
さて、そうは言っても、人の存在意義は生産性うんぬんで割り切れるものではない。
人間である以上は、ヒューマニズムの観点から物事を考えることを、決して忘れてはならないのである。