倫理的な問題も多数…
人には誰しも、「良い思い出」と「悪い思い出」がある。これから技術が進歩すると、もしかしたら悪い思い出を全て抹消することができ、頭の中は良い思い出だけということになるかもしれない…
まるで未来小説の中の話のようだが、それは遠くはない未来かもしれない。なんと、そういった記憶の書き換えの実験がマウスでは成功しているようだ!
記憶に関わる細胞群を”操作”
そもそも記憶とはなんだろうか。
アメリカ・ボストン大学の神経科学者のスティーブ・ラミレス氏によると、視覚的・聴覚的・触覚的な要素が含まれる、複合的で網のような脳細胞の情報の塊だという。
ラミレス氏は、マウスでの記憶の書換実験に既に成功しているという。その際の実験では、ある記憶を形成している細胞群を操作し、誤った記憶を作り出すことに成功したという。すごいな…
画像はイメージです
もちろんマウスの脳と人間の脳の仕組みは異なり、人間に適用できるようになるのはまだ十年単位先の未来のようだが、着実に実験は進んでいる模様だ。
この技術が完成したら、うつ病やトラウマ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の人の記憶を書き換えることで、苦しむ病から抜け出すことができるかもしれない。彼らにとっては夢の技術だろう。
人が踏み込んではいけない神の領域…?
画像はイメージです
だが、このような技術が仮に完成したとしても、考えなければならない倫理的な問題は数多く存在する。
まず、この技術は誰が使えるのか、この処置にはいくらかかるのか、副作用のようなものは起こらないのだろうか。
またこの研究は、PTSDを発症した軍人の治療を目的に始められたという。だがこれは、完治した軍人を再度戦場へ送ることにもつながる。賛否両論あろうが、「問題ない!」と声高に言える人は少ないのではないだろうか。
記憶の書き換えは、精神的に苦しむ人々を救う夢の技術ではあろうが、なんだか人間が踏み込んではいけない、神の領域のような気がしてならない…
このような技術が完成してからではなく、研究が行われているいま、考える必要があると筆者は考えるのだが、あなたはどのように考えるだろうか…?
参照元:ナショナルジオグラフィック