安全なはずのプールで
9月30日、ニュージャージー州在住の男性がプールに入った後、通称「人食いアメーバ」に感染し、亡くなってしまったことを、米メディア”ギャロウェイ・パッチ”が報じた。
死因となったアメーバは、本来河川の淡水域で発生すると言われているもの。しかし今回の男性は、安全管理されていたはずの公営のプールで感染していたことが明らかになったのだ。
GoFundMeのスクリーンショット
亡くなったのは、ファブリジオ・ステイブルさん(29)。
9月16日、彼はテキサス州にあるウォーターパークで波のプールに入ったあと、ひどい頭痛に悩まされるようになったという。一晩眠った翌朝にも頭痛は残っており、頭痛薬を飲んでもう一度ベッドに入ったという。
翌朝、彼の母親が様子を見に来るとステイブルさんは変わり果てた姿になっていた。なんとベッドから動くどころか、喋ることもできなくなっていたのだ。すぐに病院に搬送され検査を受けるも、すでに脳の腫れと熱が深刻化していたのである。
懸命な治療もむなしく、感染からわずか3日後の9月21日、ステイブルさんはこの世を去った。
その翌日、ようやく感染症検査の結果が届き、原因となったのはフォーラーネグレリアというアメーバでることがわかったのである。
フォーラーネグレリアのイメージ
このアメーバは水や湿った土壌に生息し、鼻から入り込むことで感染し、神経繊維を通じて脳に達する。主に前頭葉に重いダメージを与え、病理解剖の結果、脳が形状を保てないほど軟化していたことも報告されている。
致死率は97%といわれており、感染からわずか3日から9日で命を落とす。こうした症状からフォーラーネグレリアは、”脳食いアメーバ”や”人食いアメーバ”と呼ばれているのだ。
しかし、このニュースで問題となっているのは、本来温かい淡水域に生息するはずのアメーバが、衛生管理されているはずのあるプールに発生していたことである。
これを受け、ステイブルさんが利用したウォーターパークは立ち入り検査が行われ、現在閉鎖されている。
その後、ステイブルさんの遺族はアメーバの認知拡大を目指そうと、米クラウドファンディングサイト”GofundMe”で支援を募っている。これについて地元メディアのインタビューで、「これ以上犠牲者を出さないように・・・」と悲痛な心中を明かしていた。
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この人食いアメーバは、私たち日本人にとっても他人ごとではない。1996年、佐賀県鳥栖市で25歳の女性が感染し、わずか9日で死亡している。
今後の地球温暖化に伴い生息域が北上するとも言われており、近い未来、日本でも感染者が増える可能性がある。水辺に行くときにはくれぐれも注意してほしい。