オークションを嫌うバンクシーからのメッセージ
イギリス・ロンドンを拠点に世界各国で活動するグラフィティアーティスト、バンクシー。
街角や美術館などにステンシルを使用して描き、人種や難民、戦争などをテーマとした社会風刺的な作品を次々と残していく作家だ。無許可で壁画を残していくゲリラ的な展示スタイルをとっているため、一部からは「アート・テロリスト」と呼ばれている。
しかしその素性は謎に包まれており、正体は一切明らかになっていない。その点も多くのファンを惹きつける要因の一つだろう。
先日、そんなバンクシーの代表作である「少女と風船」という作品が、ロンドンにて競売にかけられた。
ところが・・・落札直後、作品が紙くずと化してしまったのである。
競売が行われたのは10月5日のこと。英ロンドンのオークションハウス「サザビーズ」にて、バンクシー作の絵画が出品された。
この「少女と風船」は、様々な解釈があり、ハート型の風船は自由や心を表し、それを手放さねばならなくなったという意味や、手を伸ばして風船を取り戻そうとしている少女であるとも言われている。2017年のシリア内戦の反戦キャンペーンで大々的に用いられていた。
今回出品された作品はキャンバス地にアクリル絵具でかかれたもので、2006年に現所有者が買い取っていたとのこと。
オークションは2名の電話入札者の激しい競争となり、当初の予想額の3倍にあたる1億5000万円(104万2000ポンド)で落札された。
しかし、落札のハンマーが叩かれると同時に、会場にはアラームが鳴り響き・・・額縁に仕掛けられていたシュレッダーが起動。絵画の下半分が裁断され、細切れになってしまった。
これを受け、落札者はサザビーズと今後について話し合いをしているという。
バンクシーがその一部始終を発表
その数分後、バンクシーは自身のインスタグラムにオークションの光景を投稿。
キャプションには「破壊の衝動は、創造的な衝動でもある」というピカソの名言がかかれ、序盤には「数年前、額縁の中に秘密裏にシュレッダーを仕込んでいた」というメッセージが添えられていた。
一応オークションハウスの規定上、権利が譲渡される前に作品が汚損することがあれば、落札者は支払いを拒否できるというルールがある。
落札者がどう出るかは公表されていないが、一部のアートブローカーは「今回注目を浴びたことによって逆に価値が上昇する可能性がある」との見解を示している。
バンクシーは反資本主義的な思想を持っており、今回のパフォーマンスもオークションを批判する意図をもって行ったとみられている。
とはいえ、本人が否定しているオークションの参加者を余計に喜ばせる始末となったのは、皮肉以外の何物でもないだろう。