顔の見えない相手を執拗に攻撃するネットでのいじめは、現代における社会問題の一つと言っても過言ではない。自分の素性は隠し、SNSなどを通したひどい書き込みやメッセージで気に入らない相手をとことん追い詰めるその悪どい手法は、より厳しく規制されるべきだとの声も多く上がっているのは皆さんご存知のことだろう。
そんななか、米ミシガン州で1年以上にわたりネットいじめを受けていた女子高生のニュースが注目を集めているのでご紹介したい。
ネットいじめの犯人は実母だった
2021年、この少女は心当たりのない人物から一日に最大12件の嫌がらせメールなどを受けていたという。絶え間ないネットいじめに悩んだ少女が、バスケットボールクラブのコーチを務める自身の母親ケンドラ・ゲイル・リカリ(42)に相談すると、ケンドラはすぐさま当局にこの件を報告し少女の友人関係を疑ったという。
自分の娘とその彼氏がネットいじめを受けているという相談を受けた当局は、犯人探しに協力的なケンドラを疑う余地などなかった。しかし、この事件の犯人として逮捕されたのは少女の友人などではなく、ケンドラ本人だったのである。
ケンドラは未成年へのストーカー行為2件、コンピュータを使った犯罪2件、司法妨害1件の計5件の罪に問われているというが、一体なぜ娘とその彼氏へ嫌がらせをしたのかは明らかにしていない。
サイバー版ミュンヒハウゼン症候群とは
当初、少女は自分と同年代だという匿名の人物から脅迫メールや嫌がらせなどを受けてきたというが、ケンドラからの報告を受けて警察とFBIのIT専門家が事件に関与すると、すぐにケンドラのIPアドレスに辿り着いた。そして、ケンドラが娘に送ったメッセージなどを349ページに渡ってまとめ、十分な証拠が揃ったところで詰め寄ると自白したということだ。
ケンドラの動機は今なお不明のままだが、担当した郡検察官は「サイバー版ミュンヒハウゼン症候群」という造語を用いてその行動を表現している。
それによるとケンドラは自分の娘をネットでいじめ、そうすることで娘はもっと自分を必要とするようになり、自分が娘の頼みの綱になることができるのだという。ケンドラ自身も心に抱えているものがあったのかもしれないが、それよりも実母にひどい仕打ちをされていた少女の心の傷は計り知れないだろう。
先月はじめに逮捕されたケンドラは5000ドルの保釈金を払って釈放されたものの、現在サイバー犯罪で最高10年、ストーカー行為と業務妨害でさらに5年の禁固刑に直面しているということだ。