赤ちゃんアライグマの「ブートキャンプ」が本格的すぎる!最後には卒業式まで

動物

泥の中に手を突っ込み、木に登り、魚を捕まえ、池を泳ぐ。まるで野外サバイバル訓練だが、参加しているのは人間ではない。アメリカ・ミシシッピ州で保護された、赤ちゃんアライグマたちである。

しかも約半年にわたる訓練を無事に終えると、最後には「卒業式」まで待っているというのだ。

親を失ったアライグマたちの「ブートキャンプ」

ミシシッピ州パスクリスチャンにある野生動物保護施設「Woodside Wildlife Rescue」。ここでは、親を失ったり、けがをしたりしたアライグマの子どもたちを保護している。2026年だけでも、これまでに76匹を受け入れたという。

多くは嵐や交通事故などによって母親とはぐれ、本来なら母親から教わるはずだった「野生で生きる方法」を学ぶ機会を失っている。そこでスタッフが母親代わりとなって教えるのが、施設が「Raccoon Boot Camp(アライグマ・ブートキャンプ)」と呼ぶ野生復帰訓練なのである。

穴掘り、木登り、魚捕り、そして水泳!

まだ幼いアライグマは室内でミルクを与えられるが、成長すると約20エーカー(約8ヘクタール)もある施設の敷地へ出て、本格的な訓練が始まる。スタッフは地面にミミズを隠して掘り方を教え、松ぼっくりやドングリを割って中に食べ物があることを見せる。

森では危険を知らせるアライグマの鳴き声をまねし、それを聞いた子どもたちが木へ逃げる練習もする。さらに浅い池では魚捕り、池や川では水泳だ。最初はぎこちなく水をかいていた子どもたちも、やがて自分で泳げるようになっていく。

実際の「ブートキャンプ」の様子がこちら。

こうして映像で見ると、「ブートキャンプ」という呼び名も決して大げさではない。かわいいだけに見える子どもたちだが、やっていることは野生へ帰るための真剣な授業なのである。

創設者は元船乗りだった

この施設を立ち上げたのはPaula Woodsideさん。かつて米国の商船員として働いていた人物で、野生動物のリハビリに長く携わった後、2019年にWoodside Wildlife Rescueを設立した。現在でも商船の仕事を続けながら、野生動物の保護活動を支えているという。

施設の特徴は、単に保護した動物へ餌を与えるだけではないことだ。最終的に野生へ戻す以上、人間がいなくても自力で生きていけなければならない。

最後の授業は「人間を信用しないこと」

そのため、卒業を目前にしたアライグマには少々厳しい授業が待っている。普段世話をしているスタッフとは別の人間が罠を仕掛け、実際にアライグマを一度捕獲する。人間や罠は危険なものだと覚えさせるためである。

人間に助けられ、人間から生き方を教わったのに、最後に教えられるのが「人間を信用するな」というのだから、なんとも皮肉な話である。しかし野生へ戻れば、人間を恐れず住宅地へ近づくこと自体がアライグマにとって危険になる。これも立派に生きていくための大切な授業なのだ。

そして最後は本当に「卒業式」

保護されてからおよそ半年。自分で食べ物を探し、泳ぎ、危険から逃げ、人間から距離を取れるようになれば、いよいよ卒業である。しかもWoodside Wildlife Rescueでは、本当に卒業式を行う。

流れる曲は、卒業式の定番であるエルガーの「威風堂々」。スタッフが卒業するアライグマの名前を一匹ずつ読み上げ、牧師がこれからの旅を祝福する。そして扉が開き、アライグマたちは森へ帰っていく。施設のディレクターRaquel Priestさんは、その瞬間を「子どもが家を出ていくのを見るようなもの」と語っている。

ミルクを飲ませてもらっていた赤ちゃんが、穴を掘り、木に登り、魚を捕まえ、泳ぎ、人間を警戒することまで覚えて森へ帰る。なかなか厳しい半年間だったが、卒業生たちにはぜひ立派な野生のアライグマになってもらいたい。

ただし卒業後、人間の家のゴミ箱を荒らす技術だけは覚えないでほしいものである。

参照元:
Associated Press「A raccoon boot camp in Mississippi teaches abandoned kits survival skills」【1】
WLOX「Raccoon Boot Camp: Woodside Wildlife Rescue teaches orphaned kits to survive in the wild」【2】
Woodside Wildlife Rescue「Spotlight on our Founder, Paula Woodside」【3】
YouTube「Raccoon Boot Camp」【4】

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