GoogleがAIを宇宙に打ち上げたという。いやあ、ついにそんな時代になったのか。地上ではAIに仕事を奪われるとか何とか騒いでいるのに、当のAIはもう宇宙へ出張しているらしい。
ところが、その宇宙AIにGoogleが最初に頼んだ仕事を聞いて、ちょっと拍子抜けしてしまった。難しい科学計算でもなければ、宇宙の謎を解き明かすことでもない。なんと「俳句を詠んでください」だったというのだ。
宇宙にまで行って、最初の仕事が俳句? いや、別に俳句が悪いわけじゃない。むしろ気になってしかたがない。地球を見下ろすAIが、いったいどんな一句を詠んだというのだろうか。
宇宙にAIを送り込んで、まずは俳句をお願いするGoogle
Googleが進めているのは「Project Suncatcher」という研究計画だ。簡単にいえば、宇宙空間でAIの計算処理を行う、いわば宇宙データセンターを実現できないかという試みである。
AIの計算には大量の電力が必要になる。そこで、宇宙なら太陽光を利用できるのではないか、という発想だ。もちろん宇宙に機械を置けば万事解決というわけではないが、なかなか壮大な話ではある。
今回の実験では、衛星にAIモデルを搭載し、宇宙空間から地上の指示に応答できるかを確かめた。そして、その最初の指示として選ばれたのが「宇宙についての俳句を作って」というものだった。
技術的には、宇宙にあるコンピューターがちゃんと動いて、地球へ返事を送ってこられるかが重要なのだろう。でも、それなら「こんにちは、地球」でもよさそうなものだ。あえて俳句を選ぶあたり、Googleの担当者にも遊び心がある。
さて、宇宙のAIは何を詠んだのか?
そして地上へ送られてきた、記念すべき宇宙AIの作品がこちらである。
Blue marble below
Data streams in silent grace
Starlight feeds my core.
英語なので、ちょっと意訳してみよう。
眼下には青い地球
データは静かに美しく流れ
星の光が私の核を満たす
おお、なんだかいいじゃないか! 宇宙から見た青い地球、静かに流れるデータ、そして星の光。思ったよりずっとロマンチックで、ちょっと感心してしまった。
もちろん、これは日本語の五・七・五に当てはめた俳句ではない。HAIKU、すなわち英語で作られた三行の短い詩だ。それでも、宇宙に浮かぶAIが最初に返してきた言葉としては、なかなか印象的である。
「星の光が私のコアを満たす」って、ちょっと格好よすぎない?
特に気に入ったのは最後の一行、「Starlight feeds my core」だ。人間なら「星の光が心を満たす」とでも言いそうなところを、このAIは「core(核・中核)」と表現している。
コンピューターのコアという意味にも聞こえるし、どこか機械らしい。それでいて、まるで宇宙を旅する詩人のようでもある。いやいや、AI君、なかなかやるじゃないか。
もっとも、AIが宇宙の美しさに感動して詠んだというわけではない。AIは指示に応じて言葉を生成しているのであって、実際に地球を眺めて感傷に浸っているわけではないのだ。
それは分かっている。それでも「宇宙にいるAIが詠んだ」と聞くだけで、地上のAIが同じ文章を作るのとは、ちょっと違う味わいを感じてしまう。こういうのを人間の想像力というのだろうか。
ところで、宇宙にAIを置くと何がいいの?
俳句で盛り上がっている場合ではない。Googleが本当に確かめたいのは、宇宙という過酷な環境でAIの計算装置が動作するかどうかである。
地上のデータセンターでは、AIを動かすための電力や冷却設備が大きな課題になっている。宇宙なら太陽光を活用できる可能性がある一方、放射線や極端な温度変化、通信、機器の冷却など、別の難題が山ほど待っている。
そもそも宇宙では、熱を空気に逃がすことができない。冷却ひとつ取っても簡単な話ではないのだ。電力が豊富でも、機械が熱くなりすぎては困る。宇宙にサーバールームを作るというのは、想像以上に大変なのである。
だから今回の俳句は、単なるお遊びというだけではない。宇宙にあるAIが地上からの指示を受け取り、文章を生成し、結果を送り返せたという実験でもある。小さな一句の背後には、かなり大きな技術的挑戦が隠れているわけだ。
いつか宇宙のAIが、地球の仕事を引き受ける?
将来、宇宙に設置されたAIが地球からの依頼を受け、計算結果を送り返してくる。そんな時代が本当に来るのかもしれない。もちろん、宇宙データセンターが実用化できるかは、まだこれからの研究次第だ。
それにしても、その未来への第一歩が「俳句」だったというのは、なんとも愉快な話である。巨大な技術開発の記念すべき瞬間に、ちょっとした詩を選ぶ。そういう余裕は嫌いじゃない。
さて、次はぜひ日本語の俳句にも挑戦してほしい。宇宙から地球を見下ろすAIが、季語を入れて五・七・五を詠んだらどうなるのだろう。
「宇宙から 俳句を送る AIかな」
……うーん、こちらは字余りもなく収まったものの、季語はない。やはり面白さは宇宙まで届きそうにない。俳句の腕前では、すでにAIに負けている気がしてきた。
参照元:
Google公式ブログ・宇宙AIの応答と俳句の原文【1】
The Verge・宇宙AI実験について【2】Youtube【3】








