デジタル化される故人とのお別れ、、、
愛する者の死は簡単に受け入れられるものではない。この世から去っていく人へどんな方法でお別れを伝えても、時折思い出しては涙が溢れる。
日本の葬儀は厳かに、しめやかに行われ、静かに故人を送り出すのが慣習となっている。最愛なる人が息を引き取っても、悲しみに打ちひしがれる間もなく葬儀の手配が始まり、気付けば出棺。そして愛する人が骨となり、手元に帰ってくる。
慌ただしく過ぎ去っていくからこそ、極度の悲しみを乗り越えられるとも言われるが、果たして実際はどうなのだろうか。
今、最期のお別れにも、デジタル化された新しい風が吹きつつあるようだ。
故人と四十九日を過ごす『デジタルシャーマン・プロジェクト』
仏教では、人は死後四十九日かけて閻魔大王をはじめとする十王の裁きを受けながら、極楽浄土に向かうとされ、残された者たちは四十九日間、故人が天国にいけるように祈る。また、その期間は残された者たちが、故人の死を受け入れるための期間ともいえるだろう。
そんな故人にも遺族にも大切な四十九日を、故人をコピーしたペッパーと過ごすプロジェクトが発案された。
その名は『デジタルシャーマン・プロジェクト』
故人の顔を3Dマスクで再現する他、生前の癖や仕草をペッパーに憑依させ、ロボットとして蘇った故人と四十九日を過ごす、新しい弔い方法。故人は死後49日間だけペッパーに現れ、49日後にはペッパーからも自然消滅するようになっている。
胸のタブレットでは共に過ごせる日々があと何日か、カウントダウンされていく、、
どのようにペッパーに憑依し、どうやって消滅していくのかよく分かる動画がこちら。
正直、最初はロボットにしか見えないんじゃない?と思っていたが、3Dマスクと声が本人であることにより、想像以上に故人を感じられることに驚いた。故人が残したいメッセージを伝える手段の一つにもなりうるだろう。少しでも長い時間、故人と過ごしたいと願う残された者には、ロボットであっても心のよりどころになるに違いない。
しかし、49日後にはペッパーからも消えていく故人を見送らなければならないことを考えると、二度、死を受け入れることになるので、余計につらいのでは、、?と疑問もわいてくるのである。
デジタルシャーマン・プロジェクトは文化庁メディア芸術祭のエンターテイメント部門にて2017年度の優秀賞を受賞した。これはポケモンGOに並ぶ優秀賞である。新時代の新しい弔い方法として普及していくのか、今後の動きに注目していきたい。
時代は変わり、最期のお別れはデジタル化だけでなく、簡素化されつつもある。家族葬が主流となり、派手さのない格安な葬儀が好まれている。また、車に乗ったまま参列するドライブスルー葬儀場ができる(2017年完成予定)など、今まででは考えられなかった『参列者の便利さ』を重視したサービスまでもが展開されている。
故人とのお別れを、便利さや安さで片付けてしまっていいのだろうか、、、。
死の捉え方や弔い方はそれぞれだ。何が正解ということはないが、最期の最期まで故人を思い、気持ちよく送り出すことができれば、きっと天国で安らかに眠ってくれることだろう。