最近、庭に来る鳩にエサをあげている。
想像力の欠けている者からすれば「野生の鳩にエサをあげるなんて言語道断」と怒りだすことだろう。
しかし、俺は、ただ鳩が可愛いからという理由だけでエサをあげているわけではない。
そこにはしっかりとした理由があるのだ。そもそも、この記事をお読みになっている方々は、俺のことを老若男女に優しく、小さい悪も許さない、笑顔の素敵な竹内涼真にそっくりな好青年、というイメージを持っている方々が大半だと思う。
それはそれで正解でもあるのだが、実際は、深夜に躊躇なくカップラーメンをばくばく食べることから始まり、ラインの既読スルーは当たり前、休みの日は風呂に入らない、母親の料理が不味いと世間に言いふらす、ドラクエ11を発売日に購入して未だにやっていない、デパートのトイレのウォシュレットを弱から強設定に変える等々、まさに極悪非道の限りを尽くす日々を送っている。
そればかりか俺は生まれたときから”神童”ならぬ、”悪童”と呼ばれご近所から恐れられていたほどだ。こんなことだから、きっと死んだら地獄に行くことだろう。
そのときに役に立つのがこの餌付けしている鳩達である。皆様は芥川龍之介の「蜘蛛の糸」という話をご存じであろうか?
俺のように悪の限りを尽くしていたカンダタという男が、地獄に堕ち、苦しんでいたところ、生前助けた一匹の蜘蛛が縁となりて、彼を助けるため天から蜘蛛の糸が垂れてくるという話である。
俺はこの話にヒントを得て、今回、空腹に悩む鳩を助けることにした次第だ。なぜ蜘蛛ではないのか?と問われれば、虫が大の苦手だからである。
しかし、虫を助けようが鳩を助けようが善は善。これで地獄に堕ちたとて、くるっぽくるっぽ、と愛くるしい鳴き声と共に鳩達がすぐさま俺のことを救出しに来てくれることだろう。それはまさにマジックショーが如く華麗にな。
そして、それを見た閻魔は、手に持つよくわからん木の板みたいなのを落とすほど驚くに違いない。
俺の地獄対策はもはや完璧である。もはやいつ死んでも良いといってもいいくらいだ。