「右側を指し示す矢印を180度回転させたら、どちら側を向くでしょう?」と質問をされたら「左」と答えるはず。
それが当たり前である。
しかし、そんな常識をひっくり返す動画がネットで公開されて話題を集めている。
今月(5月)初めに米国発信とみられるインスタグラムで公開された動画がこれだ。
矢印ひっくり返らず常識ひっくり返る
「なんでやねん」
そんなツッコミを入れたくなる関西人も多いだろうが、これはボケではないのだ。
いくら左側を向かせようとしても右を指すうえに、背後に鏡を置くと、そこに映る矢印は目の前にある矢印とは逆の方向を示し「CGか」と思わせるような光景が展開されている。
動画を見て、まず誰もが目を疑うだろうし、頭の中に数えきれないほどの「ハテナマーク」が浮かぶ人も多いだろうが、これはCGでも何でもなくて目の錯覚、いわゆる錯視を利用した作品で、撮影した、そのまんまの映像なのだ。
この動画が日本で海外系のネットニュースメディアなどで紹介されると、それを拡散したTwitterには公開後2週間で7万以上の「いいね」がついて、約140万回再生されており、“元ネタ”のインスタのアカウントの約44万回を大きく上回っている
「矢印」の作者に直撃
なぜ、この動画が公開されたのか?
この「矢印」を作ったのが日本人で、杉原厚吉さんという明治大学の特任教授らしいので、日本に海外から逆輸入されるようなかたちで注目を集めていることになるが、杉原さんに動画公開の経緯を質問してみると…。
この矢印は私が設計し、東京書籍からプラスチックオブジェの形で販売されています。これを買った方が動画にして投稿されたのだと思います
なんと!ふつうに日本で市販されていた。
調べてみると、昨年(2017年)7月に同社から『鏡で変身!?ふしぎ立体セット』として発売されていた商品のなかのオブジェのひとつ「右を向きたがる矢印」だったのだ。
まさに、灯台下暗し。
東京書籍の編集担当者によると…。
錯視一般につきましては、実は、日本国内よりも、海外の方が関心が高いのが現実です。杉原先生の作品一般につきましても、これまでも海外での評価が高く、錯視の『世界コンテスト』では入賞者の常連でいらっしゃいまして、世界大会で優勝したことも数度ございますので、海外の反応の方が大きいのはうなづけることでした。願わくば、これを機に日本でもっと話題になってほしいものです
…ということで、杉原さんは日本よりも海外での評価が高いようだが、編集担当者の「これを機に日本でもっと話題に」という願いはかない始めているようで、同社の営業担当者は…。
5月に入ってから、amazonなどネット書店での売れ行き伸びており、連休明けから対応していますが、今なお反響が大きく補充が追いついていない状態
…というほど注目を集めている。
明治大学のWebサイトによると杉原特任教授の「反重力四方向すべり台」という作品が2010年に米国・フロリダで開かれた「第6回年間最優秀錯視コンテスト」で、が1位に選ばれており、同コンテストで、3位以内のトロフィーがアジアへ渡るのは初めてのケースだったという。
「反重力四方向すべり台」も動画で公開されている。
「百聞は一見にしかず」という言葉も見直しが必要かもしれない。