拡散する「ミーム」
皆さんは「ミーム」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
生物学的に子孫に受け継がれる情報「遺伝子(ジーン)」に対して、文化的に受け継がれる情報のことを「模倣子(ミーム)」という。
本来は難しい概念なのであるが、SNSの流行とともに、「ネットでたくさん拡散されるおもしろ情報」のことをミームと呼ぶようになった。英語圏では多用されている言葉である。
今、ある「衝撃的な画像」が新たなミームとして話題を呼んでいる。
奇抜すぎる白骨死体
イタリア・ナポリの近郊にあったとされる古代ローマの都市ポンペイ。ナポリ湾岸にあるヴェスヴィオ火山の噴火によって壊滅したと言われている。
その遺跡から、ある白骨死体が発掘されたのだ。
それがコチラ。
Archaeologists working at the ancient Roman city of Pompeii, Italy, uncovered the remains of a 30-year-old man who appears to have survived the initial eruption of Vesuvius in 79 A.D., only to be killed when he was struck by a large slab of stone https://t.co/CgQFTssa6x pic.twitter.com/C4JEvAERMn
— CNN (@CNN) 2018年5月29日
考古学者たちが、ポンペイで、30歳の男性と見られる白骨死体を発見しました。この男性は、ヴェスヴィオの噴火からは逃れられたものの、運悪く巨大な落石によって死亡したと推察されます。
この個性的な白骨死体の姿に、多くの人が複雑な感情を抱いたようである。
ニュースに寄せられたコメントを見ると、哀れみよりも笑いがこみ上げてしまうという人が続出していた。
噴火から生き残るという幸運を持ちながら、思いもよらぬところで巨大な岩が降ってくるという、皮肉の利いた死に方をいじらずにはいられないようだ。
"I'm the luckiest man ali-!" https://t.co/fKUFIZOwPo
— Elizabeth Picciuto (@epicciuto) 2018年5月29日
「(火山から逃げられて)オレは世界で一番ラッキーな男だz─」
Man: Oh no, a volcano destroyed my city! Gee whizz, how can this day get any w- https://t.co/W1VUnUMVhd
— Eddie Bowley (@Eddache_) 2018年5月29日
男「ウソだろ・・・オレの街が火山でメチャクチャだ・・・くそ!これより最悪なことなんt─」
また、奇抜なルックスをイラスト化してしまう人も。
please help, i cant stop drawing my large cubeheaded Son pic.twitter.com/cjndAX45gT
— jomny sun (@jonnysun) 2018年5月29日
助けて、描くのやめられない。
・・・つまりは、こういうことである。
Comedy is tragedy plus time https://t.co/Td6oVd4HNF
— Mr Roger Quimbly (@RogerQuimbly) 2018年5月29日
悲劇も時間が経てば、コメディとなる。
もはや拡散不可避のミーム
さて、ちょうど一年ほど前、同じくポンペイに関わる画像が、爆発的に拡散したことをご存知だろうか。
コチラである。
Masturbating man, Pompeii, 79 CE pic.twitter.com/EPA2b17Vmd
— Persian Rose (@PersianRose1) 2017年7月2日
「噴火犠牲者の石膏像」なのであるが、言わずもがな、注目を集めたのはこのポージングである。画像にはTwitterユーザーによって「マスターベーションする男」というタイトルが付けられた。
ちなみに学者によると、この人は決してマスターベーションしているわけではないそうだ。
しかし、このミスリーディングな画像は、「死の直前まで握り続けた勇者」「伝説のマスターベーター」ともてはやされ、光の速度で拡散していったのである。
ミームは「性的なもの」と「危険なもの」がとくに拡散しやすいと言われている。人が生き延びていくために重要な因子だからである。
そういう点では、落石で死んだ男もマスターベーターも、広がるべくして広がったミームなのかもしれない。
多くの人が、どこかに「死んだ人をおちょくるなんて不謹慎では・・・」と感じる心を持ってはいるだろう。
しかしミームは、そういった我々の良心をよそ目に、野放図に拡散していくのである。