好きなときに好きな映画やドラマが見放題の動画配信サービス、ネットフリックス。
日本でのシェアは7%と伸び悩んでいるが、アメリカではなんと世帯加入率は4割にものぼるという。およそ2つに1つはネットフリックス加入世帯とは、相当なものだ。
しかしそんな動画配信界の王者ともいえるネットフリックスが、視覚障害者向けの字幕に問題があるとして訴えられてしまったのだ。
具体的にどこがダメだったのか?
問題の視覚障害者向け字幕は、発言の一部を伝えていないなどの点が改変・検閲にあたるのではとSNSで批判を浴びている。
具体的に、どんなところに問題があるのだろうか。SNSのコメントから、問題点の一部を抜粋してみた。
黒人英語特有のなまりなどを標準英語に訂正
日本でいうと、コテコテの関西弁が勝手に上品な標準語へと書き換えられているようなイメージだろうか。
確かにこれでは、受け取る印象はかなり異なる。
歌う場面で、歌詞を字幕に入れず[歌う]と表示する
よく見るこちらの字幕は健常者からすれば大したことはないが、聴覚障害者は何を歌っているのか全くわからなくなってしまう。
しかしこれは改変・検閲ではなく、著作権上の問題だという反論もある。
英語以外の言語(例:イタリア語、中国語など)の一部を削除
外国人が外国語を話している場面で、[外国語で話す]などの字幕で済まされてしまうことがある。
しかし考えてみれば、視覚障害者向けの字幕作成は翻訳ではない。もしかしたら、字幕作成者に外国語を理解する人が少ないなどの理由があるのかもしれない。
人気の『変身番組』も批判の対象に
イケてないメンズを美のプロフェッショナルであるゲイたちが改造するという、いわゆる「変身番組」の『クィア・アイ』も、批判の対象になっている。
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— Queer Eye (@QueerEye) 2018年6月27日
問題点は『クィア・アイ』だけでなく、ネットフリックスの他の番組にも見られるという。
『クィア・アイ』に出演するカラモ・ブラウン氏はツイッターにて、
Reading everyone’s comments breaks my heart. I don’t know how much power I have but know, the next time I’m at Netflix I’m going to bring up this issue internally & wont stop until something changes. Deaf & HOH people should have the same experience as everyone else! #TypoFixed https://t.co/AQ4emvgUBv
— Karamo Brown (@KaramoBrown) 2018年6月28日
「みなさんのコメントに心を痛めています。どれだけ力になれるかはわかりませんが、次にネットフリックスに行ったときには内部の人に問題を伝え、何かが変わるまで行動し続けようと思っています。障害者のみなさんも、他の皆と同じように番組を楽しむべきです」と発言している。
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いくつか問題点を挙げたが、その全てがネットフリックス側の問題だとも言い切れないだろう。
というのも、字幕作成にはたくさんの制限がある。例えば英語の場合、1秒間に10アルファベットずつという読みやすさの目安や、そもそもスクリーンに表示できる文字数も限られている。
わかりやすさを重視すれば正確性に欠ける。逆に正確性を重視すればわかりやすさに欠けるといったように、両者は相反するものなのかもしれない。
しかし、視覚障害者も健常者と同じように番組を楽しむ権利があることもまた事実である。
ネットフリックスには訴えに対し真摯に対応していただき、健常者も障害者も同じように動画を楽しめるよう願うばかりだ。