人魚になりたいという夢を叶えた女性
透き通った水の中、鮮やかなヒレを優美になびかせ、飛んでいるかのように泳ぎ回る、人魚。おとぎ話やディズニー映画「リトル・マーメイド」で、そんな優雅な姿を見て、私も人魚になりたい!と子供心に夢見たことがあるかもしれない。
Shellebrate the day Ariel became part of your world! ? Happy Anniversary, #TheLittleMermaid! pic.twitter.com/HahxC4YDIt
— Disney (@Disney) 2016年11月17日
これから紹介する話の主人公も子供の頃に、人魚になりたいという夢を持った。彼女は大人になっても夢を持ち続け、そして、夢を叶えた。
仕事を辞め、「フルタイム」の人魚に
アメリカ・シアトルに住む、ケイトリン・ニールセンさんは、海洋生物学者の両親の下に生まれた。
両親の仕事柄か子供の頃から海に興味を抱いていた。映画「リトル・マーメイド」の世界に魅了され、「私も人魚になって、水の中を自由に泳ぎたい」と考えた。
だが、周囲の反応は酷かった。幼稚園の先生に、あなたは将来何になりたい?と聞かれ、「人魚になりたい!」と言うと、周りの子供たちはバカにしたように笑いあった。
そのような経験から、人魚になりたいという夢を口にすることはなくなり、胸の奥にしまうようになる。
ニールセンさんはその後、海洋生物学を専攻して大学を卒業し、その道の仕事に就いた。
大好きな海の環境保全や、知識を広めていく活動にやりがいを感じていたが、なにかが胸の奥で引っかかっている。彼女は、人魚になりたいという夢を忘れてはいなかった。
Mermaid Cyaneaさんの投稿 2015年8月25日
そして、ニールセンさんは、2015年ある決断をする。大学卒業後から務めていた仕事を辞めたのだ。不満があったわけではないが、仕事より大切なことがあった。そう、夢を叶えようと決意したのだ。
彼女は人魚になり、”Cyanea”(サイアニア)と名乗った。足の代わりにヒレを持ち、湖やプールで泳ぐようになった。彼女は夢を叶えたのだ。
Relaxing on the Oregon Coast.
Photo by Kim Lomman Photography
Mermaid Cyaneaさんの投稿 2015年9月11日
ヒレをつけ、自由に泳ぎまわるようになった彼女はこう語っている。
“I do feel like my tail is a part of me, and I do actually feel like it is a prosthetic limb.”
ヒレは作り物だけど、本当に私の一部のように感じるわ。
“I sometimes joke that I wear a prosthetic because I was born with a terrible birth defect – which is legs.”
時々冗談を言うの、「私のヒレは作り物なのよ、足っていう変なものを持って生まれちゃったから」ってね。
Happy Friday, fishy friends! I'm surfacing from my sea of projects to let you all know that I'm presenting a panel on…
Mermaid Cyaneaさんの投稿 2016年4月1日
彼女は自作した人魚のグッズやヒレを販売することで生計を立てつつ、同時に前職の知識も活かして、海の環境や生物の情報を発信している。
本当の自分になれる場所
シアトルにはニールセンさんのほかにも、人魚となり生活をしている人たちがいる。
彼女たちは、シアトルで秘密の人魚コミュニティを結成している。時々集まり、人魚になり共に泳ぐことで、喜びを分かち合っている。
Check out me and my pod!! We were recently interviewed for a documentary by @barcroft_tv and they finally released the…
彼女たちは陸上で生活をしている時より、水中で泳ぎまわっている時の方が人生の幸せを感じるそうだ。
エド・ブラウンさんは、男性にも女性にも恋愛感情を抱かない、無性愛者と呼ばれる一人だ。
Finding cool shelter on a hot day, in the shadow of abandoned human industry.
ブラウンさんは社会の中で孤立しているように感じていた。性的少数者LGBTの人たちにとって、一般社会は居心地のよいものではない。
だが、水の中ではそのようなことを考える必要はない。人魚となり泳いでいる時は、孤立や不安の心情から解き放たれ、本当の自分をさらけだせる。
“The best part of being a merperson is the chance to live out a dream or fantasy that a lot of people, especially kids, have. ”
多くの人、特に子供たちが持っている、人魚になりたいという夢やファンタジー。私はそれを叶えられているのよ。
“When I’m in the water with my tail on, it’s just like magic.”
ヒレをつけて水の中にいる、それはまさにマジックの世界にいるようなものよ。
社会の中で何かに縛られているように感じる一般人にとっても、自己をさらけだすことのできる場は、とても重要なものなのかもしれない。
困難な道のり
だが、このような特殊な環境を理解してもらうのは、やはり難しいようだ。
"I am the shore and the ocean, awaiting myself on both sides."
Top: @mermaidcyanea
Tail: @sirenalia
Photo: @…
シアトルの人魚コミュニティのメンバーの一人、テシー・ラマーさん。
彼女は人魚になるという夢を叶えたいと、母親に伝えると、猛反対された。
“I thought it was a stupid idea first. I thought it was just going to be a waste of money and a waste of time. I thought her time could best be used studying as a graduate student than swimming with a tail.”
なんて馬鹿げた考えなの、お金と時間の無駄にしかならないわ、勉強することのほうがもっと大事よ、って思ってたわ。
猛反対され、やめさせられそうにもなったが、エシーさんはあきらめなかった。人魚になり泳ぎ続け、説得し続けた。
すると、徐々に理解を示してくれるようになった。
“I think she is in fantasy land when she is in her tail.It’s different than the reality of the hustle and bustle of being a graduate student. In the water she feels free, she feels there is nothing else more important than just swimming and enjoying the moment.”
彼女は泳ぐことで、辛く苦しい現実ではない、夢の世界にいれるのよ。何にもとらわれず自由でいること、人生の一瞬一瞬を楽しむことって、何よりも大切なことじゃないかしら。
彼女たちは苦労した末に、普通なら叶えられないと思うような夢を叶え、人生を幸せに歩んでいるようだ。
人魚として生きていく
ニールセンさんは、これからも人魚として人生を歩んでいくようだ。
I did a quick #sunset #beach photoshoot in my #seaserpent #silicone #mermaidtail a couple weeks ago! Photo by @…
Mermaid Cyaneaさんの投稿 2016年8月6日
アメリカのニュースメディアにこう語っている。
“When my tail is off I feel a little bit awkward. Suddenly I have legs and I don’t know what to do with them. I feel extremely clumsy.”
ヒレを取ると変な感じがするのよ。まるで突然、足っていう知らないものが生えてきたんじゃないかって。とても不思議な感覚よ。
“Being a mermaid, I don’t feel that I’m hiding anything I really do feel like I’m being the true me.”
人魚でいる時、その時間こそ本当の自分でいる瞬間なんだと思うわ。
彼女は人魚になることを夢見て、それを叶えて幸せな人生を歩むことができた。人生を表現する方法は人の数だけあるはずだ。それぞれの人が、それぞれの夢を叶え、それぞれの人生を歩むことができる世界こそ、本当に幸せな世界と呼べるのではないだろうか。