シャンプーのボトル、ガラス瓶のジュース、カラフルなピンポン玉、人形。これらのものには、共通する特徴がある。
列挙されたワードだけを見ると、「女子大生がインスタ用に使う小道具」的な感じであるが、正解としては、「なぜか人の直腸内に入りがちなもの」である。
「なぜか直腸内に異物が入った」として受診する案件は、古今東西でよく起こる。しかし、この「直腸内異物案件」は、医療従事者を非常に悩ませる問題でもある。
異物の形状や場所、挿入からの時間など、状況に応じて異物除去の方法論は変わってくる。事に当たる医師には、臨機応変な思考・対応が要求されるのである。
全長60cm、巨大直腸内異物との戦い
ある日のこと。イタリア・ミラノの病院に勤務する医師達のもとに、「直腸から異物が入り込み抜けなくなった」という患者がやってきた。
患者は31歳男性。救急救命室に運ばれたのち、X線検査が行われた。
患者のレントゲン写真には、全長60センチの性玩具(ディルド)がくっきりと映し出され、その先端は体の奥深くにまで到達していた。
Italian Doctors Invent New Tool To Remove 23-inch Dildo From Man's Rectum @IFLScience – https://t.co/UlxpuFUmPP pic.twitter.com/JaIWjWo2B6
— SheVibe.com (@SheVibe) 2018年9月16日
患者は「手で取り出せなくなってしまって、24時間ぐらい入ったままになっている。症状としては少しお腹が痛いくらいで、基本的には元気だ」と状況を説明。
担当医となった内視鏡医・ロレンゾ・ディオスコリディ医師と彼の同僚達は、巨大異物を取り出すためあらゆる方法を試したが、すべて失敗に終わってしまった。
「その異物は固くて、滑らかでなく、そしてあまりにも大きかった」医師達はそう回想している。
内視鏡医であるロレンゾ医師は、「大腸ポリープを切除する時に使うループ状のワイヤー」なども利用してみたそうだが、そのワイヤーはやわらかすぎて、異物をしっかりと捕らえる事ができなかった。
もう、外科的に開腹手術するしかない──誰もがそう思い始めていた。
しかしロレンゾ医師はとっさに、その場にあった医療用のワイヤー(固め)と気道確保用のステントチューブを使って、即席でループ状ワイヤーを作成。それによって異物をしっかりと掴む事ができ、そのまま引きずり出すことに成功したそうだ。
ロレンゾ医師はこの症例について論文を執筆して投稿。いろんな意味で、世界中から注目を集める事になった。
もうダメだと思ったとき、万策尽きたと思ったとき、そんなときにこそイノベーションは生まれる。
あきらめなければ、きっと道は見えてくるのだ。